被害者参加制度の概要
法律事務所エソラでは、交通事故の死亡事故では、被害者遺族の意向に応じて、被害者参加制度を利用して刑事裁判に参加することがあります。
被害者参加によって、被害者遺族がどのように刑事裁判に関われるのか?制度の概要を説明します。
①制度の趣旨
被害者参加制度は、被害者が直接裁判に参加し、自ら発言したいという思いから創設された制度です。
被害者の生の声を裁判官等に伝えていくための制度ということができます。
ただし、被害者参加人は、訴訟の当事者となるわけではなく、裁判所が相当と認める場合に限り、次のような行為を行うことができます。
②公判期日への出席
もっとも基本的な行為といえるでしょう。被害者参加制度を利用しない場合は、傍聴席で傍聴することになります。
被害者参加制度を利用した場合は、法廷の中で、検察官の隣や後ろに座ることになります。
裁判所は、公判期日の全部または一部への出席を許さないことができます。また、被害者が多数の場合、裁判所は、公判期日に出席する代表者を選定するよう求めることがでると規定されています。
③検察官に対する意見
意見を求められた検察官は、必要に応じて、権限行使・不行使について理由を説明しなければなりません。
④証人の尋問
裁判所の許可を受け、情状証人の供述の証明力を争うために必要な事項について尋問することができます。
尋問をしたい被害者参加人は、検察官の尋問終了後、直ちに尋問事項を明らかにし、検察官に対して申出を行います。検察官は申出のあった事項について、自ら尋問する場合を除き、意見を付して裁判所に通知します。実務上は、あらかじめ、検察官と打合せをしていることがほとんどです。
尋問できる事項は、一般情状に関する事項に限定されます。さらに、証人の証言の証明力を減殺するために必要な事項に限られます。
⑤被告人に対する質問
被害者参加人は、裁判所の許可を受け、被告人に質問することができます。
あらかじめ質問する事項を明らかにして検察官に対して申出をします。検察官は申出のあった事項について自ら質問する場合を除き、意見を付して裁判所に通知します。
弁護人の意見を聴いたうえで、被害者参加人が意見陳述するために必要があると認める場合で、審理の状況・質問事項の内容・申出した者の数・その他の事情を考慮し相当と認めるときは、裁判所は被告人への質問を許可します。
尋問事項は、訴因(裁判の審理対象)に関する限り制限はありません。あらかじめ、検察官と打合せをしていることがほとんどです。
⑥事実又は法律の適用についての意見陳述
被害者参加人は、裁判所の許可を受け、検察官の論告・求刑の後に、訴因として特定された事実の範囲内で事実または法律の適用についての意見を陳述することができます。
あらかじめ陳述する意見の要旨を明らかにして検察官に申出をします。検察官は意見を付して裁判所に通知します。
陳述できる範囲は、求刑に関する意見も含みます。訴因として特定された事実の範囲を超えるときは、陳述が制限されることがあります。検察官とあらかじめ打合せをしているので、制限されることは実際にはないと思います。
⑦被害者参加制度を利用するには
起訴後、検察官に被害者参加制度を利用したいと申出をする必要があります。検察官を通じて、裁判所から通知してもらい、裁判所から許可を得て、被害者参加制度を利用することができます。
被害者参加人は、上記のような行為を行うことができますが、すべて検察官を通じて申出をすることになります。つまり、検察官との打合せが必要になります。
被害者参加人は、被害者参加弁護士を選任することができます。検察官との打合せなど、弁護士を選任しておいた方が、スムーズに手続きを進めると思います。
当事務所では、交通事故の死亡事故での被害者参加制度を利用した経験があります。被害者参加制度についても、ご相談ください。
⑧情状についての意見陳述
被害者参加とは別の制度です。したがって、被害者参加制度を利用しなくても行うことができます。被害者参加制度と並行して行うことができます。
被害についての今の気持ちや、事件についての意見を法廷で述べたいという希望がある場合、あらかじめ検察官に申出することにより、意見を陳述することができます。
陳述後、趣旨を明確にするために裁判官や弁護人から質問されることがあります。