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交通事故による胎児の死亡と父親からの慰謝料請求


交通事故により胎児が死亡した場合に父親に対する慰謝料請求権を認めた裁判例を紹介します。

高松高裁昭和57年6月16日判決

 交通事故によって、妻が胎児を流産した場合に、夫に対する慰謝料請求権が認められるか?が争われた事案です。

裁判所の判断

 被控訴人Aは妻の被控訴人Bが妊娠していることによって自分と一番血縁の深い子供を得られようとしていたのに控訴人の不法行為のため妻のBが流産を余儀なくされ、当然得られるはずであつた子供を失ったのであるから、この場合の被控訴人Aは本件事故と相当因果関係の範囲内にある損害の直接の被害者であると解するのが相当でこれを間接被害者だという控訴人の主張は採用できない。

 胎児は独立の権利主体でなく、流産はその妊娠していた母親だけが直接被害者であるとし、父親を直接被害者とみない見解もあり得るが、民法第721条は胎児は損害賠償の請求権については既に生まれたるものとみなすと規定して胎児を特別扱いしているのみならず、流産に伴う生理的病理的苦痛は父と母で異なるが、胎児を失ったということ自体の苦痛については父と母を区別する理由がないことは出生後の子供を失った場合と同じであるから妻の流産によって胎児を失った父の苦痛を間接被害だという主張は採用できない。

 妻の流産程度の身体傷害自体によっては夫に固有の慰藉料請求権を発生させないという控訴人の主張は本件の被控訴人夫婦の場合はあてはまるが、流産の苦痛でも生命侵害に比肩しうる場合もあり得るからこれを一般化し常に夫の慰藉料請求権を発生させないとすることはできない。しかし当裁判所の引用する原判決は妻の身体傷害を理由としてでなく、胎児を失ったことを理由に被控訴人Aに慰藉料請求権を認めたものであるからこれ以上言及の要はない。


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