交通事故での整骨院での施術に関する裁判例を紹介します。
大阪地裁平成29年12月22日判決
交通事故の被害者が、病院ではなく、もっぱら整骨院で施術を受けていた事案です。
車両の損傷の程度が軽微であったことが認定されています。そして、①病院に通院していないこと、②整骨院での施術に医師の同意がないことも理由に、約5か月に及ぶ整骨院での施術は、1か月のみしか損害として認められていません。
交通事故の被害にあった場合は、しっかりと病院で治療を受けることが重要だということを示す裁判例といえます。
事案の概要
平成28年1月29日午前11時45分頃、大阪市内の路上において、被告車が、信号待ちのため停止中の原告車に追突した。原告は、上記の交通事故後、病院に3日間、整骨院に75日間通院した。
裁判所の判断
原告は、本件事故当日には頸部、腰部に痛みなどは感じなかったが、平成28年2月1日頃から、首から肩にかけて及び腰に痛みが現れ、同月3日、整骨院で頸部捻挫及び腰部捻挫に対する施術を受けた。原告は、同日以降、同年6月24日まで同整骨院に通院した。
原告は、この間の同年2月10日、病院を受診した。初診時の診察申込書には、原告が申告したとみられる症状として、「2/1頃から首~肩にかけての痛み、腰の痛み」との記載がある。レントゲン検査の結果、頸椎及び腰椎には軽度の加齢性変化があるだけで、明らかな骨傷は認められなかった。医師の診察では、頸椎について、傍脊柱筋の緊張と圧痛、運動時痛、可動域制限が認められたが、ジャクソンテスト及びスパーリングテストは陰性で、上肢腱反射の異常や明らかな知覚障害もなかった。腰椎については、棘突起列の圧痛と軽度の叩打痛、傍脊柱筋の緊張と軽度の圧痛、運動時痛、可動域制限が認められた。
同病院の医師は、同日から7日間の通院加療を要する頸椎捻挫、腰椎捻挫と診断し、ロキソニン錠及びムコスタ錠7日分とロキソニンテープを処方した。
原告は、同月17日に同病院を受診した際、後頸部痛と腰痛が続いていると申告して前同様の処方を受けた。原告が次に同病院を受診したのは、同年3月2日で、原告は、後頸部痛はあまり変化なし、腰痛は時折あると申告してロキソニン錠等の処方を受け、医師からリハビリもした方がよいとの指摘を受けたが、同日以降、同病院を受診していない。
原告は、上記のとおり、本件事故当日は痛みなどの症状を感じなかったものの、本件事故から遅くとも2、3日後には頸部の痛みなどの症状が現れ、本件事故から5日後の平成28年2月3日から整骨院への通院を始めるとともに、同月10日には病院を受診して頸椎捻挫、腰椎捻挫の診断を受け、その後、整骨院及び病院への通院を続けている。
そして、痛みがあったとしても、症状の内容・程度等によっては直ちに医療機関を受診せず、数日間は様子を見ることもありうることなどからすると、本件事故から整骨院の初診日まで5日間が空いていること自体はさほど不自然なものとはいえない。その後、原告が同年3月2日まで1、2週間おきに病院を受診したこと、その他、原告の診療経過に加えて、原告が、本件事故前、本件事故と近接した時期に医療機関等で治療や施術を受けたことはうかがわれないことなどにも照らすと、原告が本件事故で頸部及び腰部を受傷したことが相応に推認されるというべきである。
もっとも、衝撃の程度に加えて、原告が最後に病院を受診したのは平成28年3月2日で、同月3日以降、原告は、同病院でのリハビリを勧められるも同病院に通院することなく、整骨院に通院していたことなどを考慮すると、原告の受傷の程度としては、同年6月24日までの5ヶ月近くに及ぶ通院加療を要するものであったとは認め難く、1ヶ月程度の通院加療で足りる程度のものであったと認めるのが相当である。