後遺障害による逸失利益を否定した最高裁判決を紹介します。
最高裁昭和42年11月10日判決
交通事故により左太腿複雑骨折の傷害をうけ、後遺障害が残った被害者が、従前どおり会社に勤務して作業に従事した事案です。
本件では、労働能力の減少によって収入が減少していないことから後遺障害による逸失利益の有無が問題になりました。最高裁は、後遺障害による逸失利益を否定しました。
最高裁の判断
最高裁は、現実に収入が減少していないことから、後遺障害による逸失利益を否定しました。
交通事故による傷害のため、労働力の喪失・減退を来たしたことを理由として、将来得べかりし利益喪失による損害を算定するにあたって、上告人の援用する労働能力喪失率が有力な資料となることは否定できない。しかし、損害賠償制度は、被害者に生じた現実の損害を填補することを目的とするものであるから、労働能力の喪失・減退にもかかわらず損害が発生しなかった場合には、それを理由とする賠償請求ができないことはいうまでもない。