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後遺障害による逸失利益に関する最高裁判例②(交通事故の判例)


後遺障害による逸失利益に関する最高裁判決を紹介します。

最高裁昭和56年12月22日判決

 交通事故後、後遺障害が残り、仕事内容は変わったものの給与の減額がなかった事案です。後遺障害による逸失利益の有無が問題になりました。

事案の概要

 被上告人は、昭和47年3月11日、本件交通事故によって右手、右臀部に加療5日間を要する挫傷を受け、昭和50年1月10日までの約2年10か月にわたる通院治療の結果、身体障害等級14級に該当する腰部挫傷後遺症を残して症状が固定し、右下肢に局部神経症状があるものの、上、下肢の機能障害及び運動障害はないとの診断を受けた。なお、当該後遺症は多分に心因性のものであると考えられる。

 被上告人は、通産省工業技術院繊維高分子材料研究所に技官として勤務し、本件事故前はかなり力を要するプラスチック成型加工業務に従事していたが、本件事故後は腰部痛及び下肢のしびれ感があって従前の仕事がやりづらいため、坐ったままでできる測定解析業務に従事するようになった。しかし、本件事故後も給与面については格別不利益な取扱は受けていない。

最高裁の判断

 交通事故の被害者が事故に起因する後遺症のために身体的機能の一部を喪失したこと自体を損害と観念することができるとしても,その後遺症の程度が比較的軽微であって,しかも被害者が従事する職業の性質からみて現在又は将来における収入の減少も認められないという場合においては,特段の事情のない限り,労働能力の一部喪失を理由とする財産上の損害を認める余地はないというべきである。

 被上告人は,研究所に勤務する技官であり,その後遺症は身体障害等級14級程度のものであって右下肢に局部神経症状を伴うものの,機能障害・運動障害はなく,事故後においても給与面で格別不利益な取扱も受けていないというのであるから,現状において財産上特段の不利益を蒙っているものとは認め難いというべきであり,それにもかかわらずなお後遺症に起因する労働能力低下に基づく財産上の損害があるというためには,たとえば,事故の前後を通じて収入に変更がないことが本人において労働能力低下による収入の減少を回復すべく特別の努力をしているなど事故以外の要因に基づくものであって,かかる要因がなければ収入の減少を来たしているものと認められる場合とか,労働能力喪失の程度が軽微であっても,本人が現に従事し又は将来従事すべき職業の性質に照らし,特に昇給,昇任,転職等に際して不利益な取扱を受けるおそれがあるものと認められる場合など,後遺症が被害者にもたらす経済的不利益を肯認するに足りる特段の事情の存在を必要とするというべきである。


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