過失相殺について取上げます。

過失相殺とは?

 民法722条2項は,不法行為に基づく損害賠償の過失相殺について規定しています。被害者に過失がある場合,裁判所は被害者の過失を考慮して,損害賠償の額を定めることができます。

過失相殺は裁判官の自由裁量

 不法行為に基づく損害賠償に際して,過失相殺を行うのかどうか,どの程度の過失相殺を行うのかは,裁判官の自由裁量に委ねられています。ここで,過失相殺に関する最高裁判決を2つ紹介します。

最高裁昭和39年6月24日大法廷判決

 過失相殺の根拠について判示した最高裁判決です。最高裁は次のように述べ,過失相殺の根拠は公平の見地にあると判断しています。

 過失相殺の問題は,不法行為者に対し積極的に損賠賠償責任を負わせる問題とは趣を異にし,不法行為者が責任を負うべき損賠賠償の額を決めるのに,公平の見地から損害発生について被害者の不注意をいかに斟酌するかの問題である。

最高裁昭和39年9月25日判決

 過失相殺については,裁判所は,具体的な事案につき公平の観念に基づき諸般の事情を考慮し,自由な裁量によって被害者の過失を斟酌して損害額を定めればいいと判断しています。

過失相殺の基準

 過失相殺は,前述のとおり裁判官の自由裁量に委ねられています。しかし,交通事故の増加に伴う損害賠償請求事件の増加を受け,当事者の予測性と判断の客観性を担保し,交通事故損賠賠償の迅速な解決のために過失相殺の基準化が図られました。

 交通事故の過失相殺に関しては,判例タイムズ社から「民事交通訴訟における損害賠償算定基準と過失相殺率等の認定基準」が刊行され,実務において過失相殺率の基準として用いられています。過失相殺率の認定基準では,交通事故を事故類型ごとに過失相殺の基準を示しています。

 この基準は,訴訟のみならず,保険会社との示談交渉等においても広く用いられています。

過失相殺の評価方法

 過失相殺の評価方法には,①絶対説と②相対説があります。相対説が通説と言われています。

 上記の過失相殺率の認定基準では,「過失相殺率」が基準として示されています。そのため,たとえば,自動車と単車の事故の場合,単車が加害者として請求される場合の過失相殺率を直ちに示すものではないことに注意が必要です。

絶対説

 過失相殺は被害者の過失を単独で評価して,その程度に応じて損賠賠償の額を減額するという考え方です。

相対説

 加害者の過失と被害者の過失を対比することで過失相殺の割合を決める考え方です。