搭乗者傷害保険に関する最高裁判決を紹介します。
最高裁平成1年3月9日判決
助手席の窓から上半身を車外に出すなどして乗っていた同乗者が、事故に遭った事案です。
搭乗者傷害保険における「正規の乗車用構造装置のある場所に搭乗中の者」の意義が問題になった判決です。
事案の概要
Bの運転する普通乗用車の助手席に乗車していたAは、Bがジグザグ運転を始めた際に、助手席の窓から上半身を車外に出して、頭を自動車の天井より高い位置まで上げ、右手で窓枠の上をつかみ,左手で拳骨をつくって振り上げる動作をしていた。Bが運転を誤り、自動車の前部を進路左側の電柱に衝突させたはずみで、Aは頭部を電柱に激突させ、頭蓋骨骨折により死亡した。
Aの相続人が、Bの運転していた自動車について締結されていた自動車保険の搭乗者傷害条項に基づく搭乗者傷害保険金の支払を求めた。
最高裁の判断
自家用自動車保険普通保険約款の搭乗者傷害条項1条にいう「正規の乗車用構造装置のある場所に搭乗中の者」とは、当該乗車用構造装置の本来の用法によって搭乗中の者をいうものと解するのが相当である。
原審の適法に確定したところによれば、亡Aは、本件事故当時、B運転の普通乗用自動車の助手席の窓から上半身を車外に出し、頭部を自動車の天井よりも高い位置まで上げ、右手で窓枠をつかみ、左手を振り上げる動作をしていたというのであって、かかる極めて異常かつ危険な態様で搭乗していた者は、乗車用構造装置の本来の用法によって搭乗中の者ということはできず、「正規の乗車用構造装置のある場所に搭乗中の者」に該当しないものというべきである。