関節の機能障害を例に、後遺障害等級の併合・相当級を取り上げます。
後遺障害の併合
複数の後遺障害が残った場合、後遺障害等級は、以下のルールによって等級が決まります(後遺障害等級認定のルール参照)。
多くの後遺障害があれば、それだけ日常生活・仕事上の支障が高まるであろうとして、後遺障害等級をアップさせる運用が後遺障害の併合です。
相当等級
後遺障害の等級は、自動車損害賠償保障法施行令の別表に規定されています。しかし、全ての障害を規定できず、残存障害の程度に応じて別表を踏まえて規定した独自の等級が『相当』です(後遺障害等級認定のルール②参照)。
後遺障害等級の具体例
自転車やバイクに乗車していて事故受傷すると重篤な骨折が生じる場合があります。以下、大腿骨骨折の傷害を負った場合を例に、後遺障害の等級がどうなるか?を検討します。
具体例①
大腿骨骨折に伴い長期間のギプス固定により、以下の可動域制限(関節の機能障害)が生じたとします。
①右股関節:12級7号
②右膝関節:12級7号
③右足関節:12級7号
この例では、後遺障害等級は10級相当となります。13級以上が2つ以上あれば、一番重い等級を1つ繰り上げるので、併合11級となりそうです。
しかし、「1下肢の3大関節のすべての関節の機能に障害を残すもの」として10級相当との規定があります。したがって、併合11級ではなく、10級相当が適用されます。
具体例②
左右とも同じ骨折に伴い、可動域制限が生じたとします。
①右股関節:12級7号
②右膝関節:12級7号
③右足関節:12級7号
④左股関節:12級7号
⑤左膝関節:12級7号
⑥左足関節:12級7号
右側の後遺障害等級は、具体例①でみたように10級相当になります。左側の後遺障害等級も10級相当になります。
この場合は、まず左右とも10級相当が適用されます。最後に2つ10級相当があるので、13級以上が2つ以上あれば、一番重い等級を1つ繰り上げるとの運用に基づき併合9級が適用されます。
具体例③
具体例①の10級相当の骨折に伴い,足指まで可動域制限が生じた場合
①右股関節:12級7号
②右膝関節:12級7号
③右足関節:12級7号
④右足の親指関節(用廃):12級12号
たとえば,腓骨神経麻痺が生じると足指の可動域に障害が生じます。
この例では,後遺障害等級は9級相当になります。まず,右股関節・右膝関節・右足関節を一括りにして10級相当とします。そして,右足の親指関節は12級12号なので,13級以上が2つ以上あれば,一番重い等級を1つ繰り上げる運用に従い,9級相当となります。