加害者が酒酔い運転を行い、交通事故を起こした場合に保険会社が責任を免れるか?を判断した最高裁判決を紹介します。
最高裁昭和44年4月25日判決
運転手が、酒に酔って正常な運転ができないのに自動車を運転して事故を起こした事案です。
このような場合は、交通事故によって生じた損害について、保険会社は責任を免れると判断した判決です。
最高裁の判断
本件自動車保険普通保険約款3条1号および4条4号の各趣旨およびその関係について、慣習を顧慮したうえ、4条4号は、本件事故当時施行されていた道路交通取締法および同施行令等が危険の発生あるいは増加の蓋然性が極めて大きいものとして自動車の使用または運転を禁止しているような重大な法令違反行為で、右行為が罰条に該当し、かつ、同法令違反と事故との間に因果関係のある場合にかぎり、免責とすることを定めたものと解するのが相当であり、そして、約款4条4号が法規違反の主体を保険の当事者のみに限定したものとする解釈は合理的根拠を欠くものといわなければならない旨、約款3条1号は、その責に帰すべき事由で任意に招致した事故は保険の信義則に違反し偶然性を欠く点から、いわゆる事故招致に基づく商法所定の免責の範囲を保険契約者、被保険者、保険金を受け取るべき者のほか、これらの者の代理人等に拡大する反面被保険者の管理監督の及ばない運転手または助手の重過失(運転手の故意については被保険者自身の責任と同一視して免責を除外する。)に例外を認めることによって善良な被保険者を保護しようとしたもので、同但書は事故招致免責の例外復活規定というべきものであり、約款4条4号とはその制定の趣旨を異にするから、約款3条1号但書の箇囲で約款4条4号の適用が当然排除されると解すべきではない旨の判断は正当というべきである。
本件事故はAが酒に酔って正常な運転ができないにもかかわらず自動車を運転したため惹起されたものであることは、原審の適法に確定した事実であるから、Aは前記道路交通取締法7条1項2項3号により自動車の運転を禁止される(同条違反は同法28条1号により罰せられる)状態にあったにもかかわらず、その状態のまま自動車を運転した悪質重大な法令違反行為により本件事故を惹起したものというべきである。そうとすれば、前記説示に照らし、被上告会社は本件事故による損害につき填補の責に任じないものというべきであり、これと同趣旨の原判決の判断は相当である。