主婦(夫)も休業損害を請求できる

 家事労働に従事している主婦(夫)を家事従事者と呼んでいます。家事労働自体には,金銭の支払いが生じませんが,財産上の利益を有するというのが,判例の考え方です。

 したがって,家事従事者が交通事故で負傷し,家事ができなくなった場合,休業損害が認められます。金銭的な評価としては,賃金センサスの学歴計・女性全年齢平均賃金を基礎とします。年によって金額は異なりますが,平成27年の賃金センサスでは372万7100円(年間)になります。

 家事従事者が男性の場合も女性全年齢平均賃金を基礎収入として算定します。

いろいろ修正される

 ただし,年齢,家族構成,身体状況,家事労働の内容等から賃金センサスの平均賃金に相当する労働を行うことができないと認められる場合は,学歴計・女性対応年齢の平均賃金などを踏まえ,基礎収入を算定することになります。特に,高齢者の場合に特に問題となりますが,後述します。

兼業している場合

 家事従事者が就職していて,給与等をもらっている場合,実収入額が賃金センサスの学歴計・女性全年齢平均賃金を上回っている場合は,実収入額により算定します。下回っている場合は,賃金センサスの学歴計・女性全年齢平均賃金によって算定することになります。

 なお,現実収入と家事労働を合算することは認められていません。ちなみに,保険会社は,兼業の場合に家事従事者としての支払いができるのは,パートの場合だけだなどと主張してきます。しかし,裁判実務では,パートに限るといった限定はありません。

高齢者の場合は認められないこともある

 平成11年11月22日,東京・大阪・名古屋地裁から逸失利益の算定についての共同提言がなされました。家事従事者の休業損害について共同提言の内容は,前述したとおりなのですが,具体例について言及しています。

 ①88歳の専業主婦,夫と二人で年金生活

 88歳という年齢と,夫と二人で暮らしていることから,家事労働は,自ら生活していくための日常的な活動と評価し,逸失利益は認めないとされています。

 ②74歳の専業主婦,夫と二人で年金生活

 ①とは違い,平均余命の半分程度は家事労働を行うことができ,金銭評価するのが相当として,65歳以上の平均賃金の70%を基礎収入として逸失利益を算定するとされています。

ところで,家事労働の制約の程度は?

 入院を伴うような重大事故の場合などを除いて,大多数の交通事故の場合,被害者はある程度のけがであっても家事労働をそれなりに行っています。

 したがって,休業損害としては,実際に家事労働の制約を受けた範囲で休業が生じたとして算定することになります。問題は,どの程度,制約が生じたのか?ということです。

 たとえば,家事労働以外に仕事をしている場合,保険会社側は,「仕事ができてるんだから,家事労働に支障はないでしょ」ということで,家事労働としての休業損害の支払いを拒みます。