給与所得者の休業損害の算定を取り上げます。
休業損害の算定
休業損害の算定は以前に取り上げているように(休業損害の算定参照)、基礎収入×休業期間によって算定します。
基礎収入は、1日当たりの収入日額を算定します。具体的な算定方法として、以下の4つの算定方法が考えられます。
休業損害の算定方法
①休日を含んだ一定期間の平均日額を基礎収入とし、休業期間を休日を含む期間として算定する。
②休日を含まない実労働日1日当たりの平均日額を基礎収入として、実際に休業した日数を休業期間として算定する。
③①の基礎収入に実際に休業した日数を休業期間として算定する。
④②の基礎収入に休業期間を休日を含む期間として算定する。
④の算定方法は、基礎収入を実労働日で計算しているにもかかわらず、休業期間に休日を含むため、過大に休業損害が算定され、不適切です。
③の算定方法は、保険会社が採用している算定方法です。基礎収入に休日に含めているにもかかわらず、実際に休業した日数を休業期間とするため、休業損害が過小に算定されます。しかし、被害者が控えめに損害額を主張したり、証拠上、基礎収入を正確に把握できない場合もあることから、直ちに不適切とはいえないと解されています。
給与所得者が完全休業を継続している場合の休業損害の算定
給与所得者の完全休業がある程度、長期間の場合は、上記の①と②のどちらで休業損害を算定しても結論に大きな差はありません。実務上は、①の算定方法を採用することも少なくないとされています。
給与所得者が労働しながら、一定の頻度で通院している場合の休業損害の算定
証拠上、交通事故前の稼働日数と給与の金額を立証できるのであれば、上記②の算定方法で休業損害を算定するのが相当といえます。
証拠上、事故前の稼働日数と給与の金額が立証できない場合は、③の算定方法を用いることもあり得ます。
有給の使用と休業損害の算定
実務上、有給休暇を治療等のために使用した場合は、休業損害の対象となることは確立しています。
ただ、実務上、有給休暇を使用した場合に、有給休暇を使用した日の給与として支払われた金額や算定根拠となる就業規則等が証拠として提出されることはありません。
したがって、有給休暇を使用によっても免れることができなかった現実の減収額を個別具体的に算定することはできません。
以上のことから、有給休暇を使用して休業した日の休業損害の算定は、有給休暇を使用せずに休業した日の休業損害の算定と同じ算定方法を取ることになります。