加重障害と認定された場合、慰謝料の算定は、どのように行いますか?
加重障害の後遺障害慰謝料
交通事故の前から被害者に後遺障害があり、交通事故によって、同じ部位の障害が重くなったことを加重障害といいます。
加重障害には、後遺障害の逸失利益の算定をどのようにするのか?という問題があります(加重障害の逸失利益の算定参照)。また、後遺障害の慰謝料の算定について、加重障害の場合、既存障害をどのように考慮するのか?という問題があります。
加重障害の慰謝料についての裁判例の考え方
裁判例において、加重障害の場合の後遺障害慰謝料について、以下のような考え方に基づいて算定されています。
裁判例の中には、後遺障害による逸失利益を否定したことを慰謝料の増額事由として考慮したものや、加重後の後遺障害等級に対応した慰謝料額をそのまま認定したものもあります。
加重障害の慰謝料の算定方法
後遺障害による逸失利益の算定と同じく、以下の3つの算定方法が考えられます。
交通事故の損害賠償において、後遺障害慰謝料は、後遺障害の等級(程度)に応じて、賠償額の基準が決められています。このことから、①の考え方によるのが、実態に即した考えといえます。もっとも、今回の交通事故による後遺障害の程度をどのように認定するのか?という問題があります。
②の考え方は、自賠責保険の考え方と同じ考えに基づいていると考えられます。そもそも、後遺障害慰謝料は、等級間での差引きを考慮して基準化されているのか?という疑問が指摘されています。
③の考え方は、素因減額または寄与度減額において、どの程度減額するのか?を基準化することができず、事案ごとにばらつきが出てくることが予想されます。
もっとも、慰謝料は、基準化されているとはいえ、調整機能があったり、様々な事情を考慮して慰謝料額が認定されるので、被害者としては、様々な事情を主張・立証していくということになろうかと思います。