交通事故の損害賠償に関して、受領した生命保険金が損益相殺の対象になるか?を判断した最高裁判決を紹介します。
最高裁昭和39年9月25日判決
交通事故で死亡した被害者の相続人が受領した生命保険金が、損益相殺の対象になるか?が争われた事案です。
事案の概要
Xは、自転車に乗って駅前広場を東方に向って進行し国道に出た際、国道を進行してきたY運転の小型四輪貨物自動車に衝突され、約7メートル引きずられて頭蓋骨骨折、頭蓋内出血の傷害を受け、附近の外科病院における手当のかいもなく、翌日、同病院において死亡した。
最高裁の判断
最高裁は次のように述べ、生命保険金は損益相殺の対象にならないと判断しています。
生命保険契約に基づいて給付される保険金は、すでに払い込んだ保険料の対価の性質を有し、もともと不法行為の原因と関係なく支払わるべきものであるから、たまたま本件事故のように不法行為により被保険者が死亡したためにその相続人たる被上告人両名に保険金の給付がされたとしても、これを不法行為による損害賠償額から控除すべきいわれはないと解するのが相当である。
したがって、損害額の算定に当ってこれを控除しなかつた原判決の判断は正当である。