死亡事故の被害者が年少者の場合、損賠賠償に際して、本来、支出していた養育費の支払が不要になることから、養育費を損益相殺することができるか?を判断した最高裁判決を紹介します。
最高裁昭和39年6月24日判決
交通事故により亡くなった幼児の逸失利益について、一概に算定不能として逸失利益を否定すべきではない判断した最高裁判決です。
養育費の損益相殺についても判断しています。
最高裁の判断
最高裁は次のように、損賠賠償額から養育費を損益相殺することを否定しています。
損害賠償請求権を相続した被上告人らは、他面において、被害者らの死亡により、その扶養義務者として当然に支出すべかりし20才までの扶養費の支出を免れて利得しているから、損益相殺の理により、賠償額から扶養費の額を控除すべきであると主張するが、損益相殺により差引かれるべき利得は、被害者本人に生じたものでなければならないと解されるところ、本件賠償請求権は被害者ら本人について発生したものであり、所論のごとき利得は被害者本人に生じたものでないことが明らかであるから、本件賠償額からこれを控除すべきいわれはない。