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低速度での追突事故でむち打ちの受傷を否定した裁判例(交通事故の裁判例)


低速度での追突事故で、むち打ちの受傷を否定した裁判例を紹介します。

横浜地裁令和2年2月27日判決

 赤信号停車中の大型貨物自動車に、普通自動車が追突した交通事故の事案です。

 Xは、時速40㎞の自動車に追突されたほどの衝撃を受けたと主張していました。しかし、裁判所は、むち打ちの受傷を否定しました。なお、労災保険では、労災認定され、障害補償給付の障害等級は14級9号が認定されていました。

事案の概要

 Xは、平成29年9月27日午後6時45分頃、X車両を運転し、神奈川県厚木市内の道路上において、対面する信号機が表示する赤色の灯火の信号に従ってこれを停止させていたところ、Yの運転するY車両に追突された。

 X車両は、長さが1,194センチメートル、車両重量が1万1,930キログラム、最大積載量が1万2,900キログラム、車体の形状が冷蔵冷凍車である大型貨物自動車である。Y車両は、車両重量が1,450キログラムである普通自動車である。

 Xは、平成29年9月27日午後11時25分頃、A病院救命センターを受診し、さらに、同月28日及び同年10月12日、同病院に併設されたB整形外科を受診して、頚椎捻挫、左肘痛、頚部椎間板ヘルニア疑いと診断されるなどした。

 その後、Xは、平成29年10月16日から平成30年6月21日まで、C病院整形外科に通院して(実通院117日)、同月29日、自動車損害賠償責任保険後遺障害診断書の発行を受けた。同診断書には、傷病名として「外傷性頚部症候群、中心性頚髄損傷(疑い)」と、症状固定日として「30年6月21日」と、自覚症状として「左上肢シビレ・頚部痛時々あり」と記載されている。

 Xは、平成30年11月14日までに、労災保険の手続において、その症状について障害等級表の第14級9号に該当するものとする判断を受けた。

 他方、Xは自賠責の手続においては、「本件事故と治療・施術との相当因果関係は認められないことから、自賠責保険(共済)の認定対象外と判断します」旨の判断を受けた。

裁判所の判断

 裁判所は、X車両の損傷状況等から受けた衝撃が軽微であった等を理由に、むち打ちの受傷を否定しました。

 X車両は、長さが1,194センチメートルの冷蔵冷凍車であり、台座の上に運転席のあるキャビンと箱形のコンテナとが載せられている構造をしており、コンテナの後部には、荷物の積卸しをするためのリフトであるパワーゲートが備え付けられ、コンテナの下部に格納されていたところ、本件事故により、パワーゲートに損傷を受けたほか、パワーゲートの直上に設けられていたバックランプ(後退灯)が脱落した。

 X車両が本件事故によりパワーゲートに受けた損傷について、その調査に当たったアジャスターが作成した自動車車両損害調査報告書には、「格納ゲートは直撃により上下パレットが変形し、取付ジョイントも損傷しており、取替が妥当と思われます。」旨の記載があるが、本件事故後にX車両のパワーゲートを撮影した写真からは、光の反射の加減に照らしてその表面にわずかな歪みが生じていることはうかがわれるものの、明らかな凹損を認めることはできない。また、同報告書には、「波及損傷はありません。」旨の記載がある。

 上記アジャスターは、X車両の修理費用を185万7,384円(税込み)と見積もっているところ、そのうちの182万3,040円(税込み)は、パワーゲートの脱着及び修理に係る部品価格及び工賃である。

 Y車両は、普通自動車であるところ、本件事故により、前部に損傷を受けたほか、ヘッドライト(前照灯)が故障した。

 Y車両が本件事故により前部に受けた損傷について、本件事故後にY車両を撮影した写真からは、前部右側におおむね握り拳大程度の凹損を認めることができるが、このほかには明らかな凹損を認めることはできない。

 本件事故によりX車両が受けた衝撃は微弱なものであったと推認されるところ、このことに加えて、X車両が本件事故により受けた損傷の部位が主としてパワーゲートであること、X車両は、台座の上に運転席のあるキャビンと箱形のコンテナとが載せられている構造をしているところ、パワーゲートはコンテナの後部に備え付けられたものであること、X車両の長さは1,194センチメートルに及ぶものであること、X車両の重量は、積載していた食品の重量を除いても、1万1,930キログラムに達するのに対し、Y車両のそれは、1,450キログラムにすぎないこと、Yは本件事故により格別の傷害を受けていない旨を述べていることなどの事情を踏まえれば、X車両の運転席にいたXに頚椎捻挫、外傷性頚部症候群、中心性頚髄損傷の傷害を生じさせるほどの力が及んだとはおよそ考え難いというほかない。

 したがって、Xが本件事故により頚椎捻挫、外傷性頚部症候群、中心性頚髄損傷の傷害を負ったと認めることは困難であるというべきである。


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