運行供用者が運行供用者責任を免れるためには、免責要件(運行供用責任の免責要件)をすべて主張・立証する必要があるのか?を判断した最高裁判決を紹介します。
最高裁昭和45年1月22日判決
運行供用者が運行供用者責任を免れるには、免責要件の3つを主張・立証する必要があります(自賠法3条但書)。この判決は、交通事故の発生と因果関係のない免責要件についてまで主張・立証する必要があるのか?が争われた事案です。
事案の概要
停滞していた対向車のかげから、幼児が飛び出したため,急停車の措置を取ったが接触を避けることができず、幼児に接触してしまったという事案です。
本件の訴訟において、自賠責3条の運行供用責任の免責要件は、まったく主張されていませんでした。
最高裁の判断
最高裁は次のように、常に免責要件のすべてを主張・立証する必要はないと判断しています。
自己のため自動車を運行の用に供する者が、その運行によって他人の生命または身体を害し、よって損害を生じた場合でも、運行供用者において、自賠法3条但書所定の免責要件事実を主張立証したときは、損害賠償の責を免れるのであるが、しかし、要件事実のうちある要件事実の存否が、当該事故発生と関係のない場合においても、なおかつ、当該要件事実を主張立証しなければ免責されないとまで解する必要はなく、このような場合、運行供用者は、要件事実の存否は当該事故と問題がない旨を主張立証すれば足り、つねに同条但書所定の要件事実のすべてを主張立証する必要はないと解するのが相当である。
本件についてみるに、本件記録に徴すれば、被上告会社において、自己が本件事故車の運行に関し注意を怠らなかったかどうか、自動車に構造上の欠陥または機能の障害がなかったかどうかは、本件事故と関係のない旨暗黙の主張をしているものと解せられ、原審も、その旨の認定判断をしているものと解せられないではないから(右認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし是認するに足りる。)、原判決に所論の違法はなく、論旨も採用することができない。