交通事故において、道路管理者の道路管理の瑕疵の有無が問題になった最高裁判決を紹介します。
最高裁昭和50年6月26日判決
運転者や車両に問題がなくても、道路の状態に問題があり、交通事故が発生した場合、道路管理者である国等が責任を負うことがあります(国賠法2条1項)。本判決は、道路管理の瑕疵が問題になりました。
事案の概要
本件事故現場は桜井市の県道天理・桜井線初瀬橋北詰附近であり、アスファルト舗装がされて直線、平担であるところ、初瀬北詰の道路の中心線より西側、すなわち北進道路を掘穿工事中で、工事箇所を表示する標識として、工事現場の南、北各約2メートルの地点に工事標識板及び高さ約80センチメートル、幅約2メートルの黒黄まだらのバリケードが一つずつ設置され、バリケード間の道路中心線附近に高さ約1メートルの赤色灯標柱が1つずつ設置されていたが、昭和41年9月6日午後10時30分頃本件事故が発生する直前に、同所を北進した他車によって上記記工事現場の南側に設置されていた工事標識板、バリケード及び赤色灯標柱はその場に倒され、赤色灯が消えていた。
最高裁の判断
最高裁は、次のように、道路管理者の賠償責任を否定しました。
本件事故発生当時、被上告人において設置した工事標識板、バリケード及び赤色灯標柱が道路上に倒れたまま放置されていたのであるから、道路の安全性に欠如があったといわざるをえないが、それは夜間、しかも事故発生の直前に先行した他車によって惹起されたものであり、時間的に被上告人において遅滞なくこれを原状に復し道路を安全良好な状態に保つことは不可能であつたというべく、このような状況のもとにおいては、被上告人の道路管理に瑕疵がなかったと認めるのが相当である。