交通事故の被害者の任意保険会社に対する直接請求を取上げます。
任意保険会社への直接請求
自動車保険は、責任保険の一種です。責任保険とは、被保険者が損害賠償責任を負うことで生じる損害を填補する保険です。被保険者が被害者の損害賠償請求権について弁済した金額又は損害賠償請求権を有する者の承諾があった場合の限度で、保険会社に対して保険給付を請求することができます。
強制保険である自賠責保険は、自賠法16条において、被害者の直接請求権を認めています。
一方、任意保険の被害者の直接請求権は、保険契約の当事者の第三者のためにする契約に基づく効果として生じるものです(民法537条1項)。
任意保険は、約款上、被害者の直接請求権を規定しています。これは、保険会社に当事者性を持たせることで、示談代行が非弁行為に該当するとの疑念を払拭するとともに、被害者救済を図るものと考えられています。
約款上、直接請求権を行使できる場合
被害者の直接請求権を行使できる場合として、約款上、次の場合を規定しています。
加害者が自動車保険の利用を拒否している場合
任意保険には、通常、示談代行サービスが付保されています。しかし、被保険者である加害者が任意保険の利用を拒否し、被害者との賠償交渉にも応じない場合があります。
この場合、被害者としては、保険会社を直接の交渉相手とすることになります。そのために、任意保険会社に対する被害者の直接請求権を根拠に請求をします。約款上の根拠としては、上記の(3)です。
ただし、前述のとおり、任意保険会社に対する被害者の直接請求権は、契約上認められているものです。そのため、任意保険会社は、被害者からの直接請求に対して、免責事由等を主張することができます。