交通事故でむちうちや腰椎捻挫になり、痛みやしびれが残っている場合、後遺障害認定で問題になるのが「他覚所見」です。
「MRIに異常がないと言われた」「後遺障害診断書に何を書いてもらえばいいのかわからない」「他覚所見がないと後遺障害は認められないの?」このような不安を持つ方は少なくありません。
後遺障害認定では、痛みやしびれといった自覚症状だけでなく、その症状を裏付ける画像所見・神経学的検査・治療経過との整合性が重要になります。
交通事故の後遺障害認定における他覚所見の意味、12級13号・14級9号との関係、申請前に確認しておきたいポイントを解説します。
- 1. 他覚所見
- 1.1. 医学上の他覚所見
- 1.2. 後遺障害の認定における他覚所見
- 2. 後遺障害認定で他覚所見が重要になる理由
- 2.1. 痛み・しびれは本人にしかわからない
- 2.2. 症状を客観的に裏付ける資料が必要になる
- 3. むち打ちの他覚所見の具体例
- 3.1. MRIの画像所見
- 3.2. 腱反射
- 3.3. 神経学的検査
- 4. むち打ちの後遺障害は、12級と14級が問題になる
- 4.1.1. むち打ちの後遺障害等級
- 4.1. 12級13号は「医学的に証明できる」
- 4.2. 14級9号は「医学的に説明できる」
- 4.3. 12級と14級の違い
- 5. 他覚所見がないと、むち打ちで後遺障害は認められない?
- 5.1. 12級は認められない
- 5.2. 他覚所見がなくても14級が認定される可能性がある
- 6. 後遺障害申請前に確認しておきたいこと
- 6.1. 症状を医師に具体的に伝えているか?
- 6.2. 必要な検査を受けているか?
- 6.3. 後遺障害診断書の記載が症状と合っているか?
- 6.4. 保険会社任せにしすぎていないか?
- 7. 弁護士に相談した方がいい場合
- 8. 後遺障害について、よくある質問
- 9. 後遺障害認定に不安のある方へ
他覚所見
他覚所見は、他覚的所見や他覚症状とも呼ばれ、自覚症状に対する用語です。
ちなみに、自覚症状とは、患者自身が感知する症状のことです。つまり、患者の症状についての訴えです。
医学上の他覚所見
医学上、他覚所見とは、診断医が客観的観察によって確認できる身体的異常のことを意味します。視診・打診・聴診・触診といった理学的検査や画像検査・神経学検査によって、確認できる所見です。
ただし、医師等の観察者が、明白に認識できた症状や異常のことも他覚所見と呼ぶことがあります。この意味で用いられる場合は、他覚所見と自覚症状とは、差がないと考えられます。
後遺障害の認定における他覚所見
交通事故の後遺障害の認定に関して、自賠責保険は、局部の神経症状の12級は、他覚所見によって医学的に証明されたものとしています。しかし、他覚所見については、特に定義づけしていません。
裁判例では、症状を裏付ける客観的な所見と捉えられています。つまり、医学上の他覚所見であっても、医師等の観察者が明白に認識できた症状や異常では足りず、医師の所見が、客観的な検査によって裏付けられていることが必要と考えられます。
したがって、後遺障害の認定における他覚所見は、医学上の他覚所見と必ずしも一致しないことに注意する必要があります。
後遺障害認定で他覚所見が重要になる理由
なぜ、後遺障害の認定で他覚所見が重要なのでしょうか?
痛み・しびれは本人にしかわからない
むち打ちの主な自覚症状は、「痛み」と「しびれ」です。「痛み」と「しびれ」は、本人にしかわかりません。「痛み」と「しびれ」は、客観的に観察できす症状ではありません。したがって、本人が「痛い」「しびれる」と言っている以上、自覚症状として「痛み」と「しびれ」は常にあるということになります。
症状を客観的に裏付ける資料が必要になる
自覚症状のみで後遺障害を認定すると、常に自覚症状はあるので、全てが後遺障害として認定されることになります。自覚症状として、本当に「痛み」や「しびれ」があったとしても、その程度は様々です。そこで、後遺障害の認定に際しては、自覚症状を裏付ける客観的な資料、つまり、他覚所見が必要となるのです。
むち打ちの他覚所見の具体例
むち打ちの場合、他覚所見にどのようなものがあるのでしょうか?
MRIの画像所見
むち打ちの場合、X線・CT・MRIといった画像検査が行われます。最も重要なのは、MRIの画像所見です。
むち打ちで後遺障害12級が認定されるには、症状に応じた「脊髄や神経根への明らかな圧迫所見」が必要です。
なお、主治医が、MRI画像を見て「椎間板ヘルニア」だと言ったり、診断しても、自賠責保険の後遺障害認定では、画像所見がないと判断されることがほとんどです。
腱反射
むち打ちで後遺障害12級が認定されるには、MRIの画像所見があるだけでは不十分です。以下のように、症状に応じた「深部腱反射テストの低下の所見」も必要です。
| 腱反射 | 反射中枢髄節高位 |
| 上腕二頭筋腱反射 | C5~6 |
| 腕橈骨筋腱反射 | C5~6 |
| 上腕三頭筋腱反射 | C6、C7~8 |
| 腕筋反射 | C5~T1 |
| 回内筋反射(頭骨回内筋反射、尺骨反射) | C6~T1 |
| 膝蓋腱反射 | L2~4 |
| 下肢内転筋反射 | L3、4 |
| 膝屈筋反射 | L4~S2 |
| アキレス腱反射 | L5、S1、S2 |
神経学的検査
むち打ちの場合、ジャクソンテスト、スパークリングテスト、SLRテスト、ラセーグテストといった神経学的検査が行われる場合があります。
これらの検査は、患者の自己申告だったり、正確性に問題があったりします。そのため、後遺障害の認定では、ほとんど意味はありません。

以下の「むち打ちの神経学的検査」も参照
むち打ちの後遺障害は、12級と14級が問題になる
むち打ちの後遺障害は、12級と14級の後遺障害等級の認定が問題になります。それぞれの後遺障害等級は、以下のように、定義されています。
定義だけみると、症状の程度の問題のように思えます。しかし、実際は、そうではありません。
12級13号は「医学的に証明できる」
自賠責保険で、後遺障害等級12級13号が認められるには、①受傷当初から一貫して認められる自覚症状と②医学的な整合性の認められる画像所見及び神経学所見に裏付けることが必要とされています。
むち打ちの場合の画像所見は、MRI画像です。神経学的所見は、腱反射・病的反射・筋萎縮などです。これらの他覚所見が必要なのです。
14級9号は「医学的に説明できる」
後遺障害等級12級13号が認められる他覚所見がなくても、症状経過・治療状況等を勘案し、後遺障害等級14級9号が認められることがあります。
「医学的に証明はできないが、説明可能な場合」に、14級9号と認定されるとなどと言われることがあります。
12級と14級の違い
| 12級13号 | 14級9号 | |
| 定義 | 局部に頑固な神経症状を残すもの | 局部に神経症状を残すもの |
| 実際の運用 | ①受傷当初から一貫して認められる自覚症状 ②医学的な整合性の認められる画像所見及び神経学所見に裏付け | 医学的な裏付けはないが、症状経過・治療状況等を勘案し後遺障害と認められるもの |
| 画像所見 | MRIで脊髄や神経根への明らかな圧迫所見が必要 | MRIで異常所見がなくても認められる |
他覚所見がないと、むち打ちで後遺障害は認められない?
MRI画像などの他覚所見がない場合、むち打ちで後遺障害は認められないのでしょうか?
12級は認められない
他覚所見がない場合、後遺障害等級12級13号が認められることは、まずありません。
他覚所見がなくても14級が認定される可能性がある
MRIなどの画像で明らかな異常が確認できない場合、12級13号の認定は難しいです。もっとも、画像所見がないからといって、後遺障害が認められないわけではありません。
むちうちでは、画像上明らかな異常がなくても、事故の態様、症状の一貫性、通院状況、治療経過、神経学的検査の結果などから、14級9号が認定される可能性があります。
後遺障害申請前に確認しておきたいこと
後遺障害の申請前に、確認しておきたい点をまとめておきます。
症状を医師に具体的に伝えているか?
後遺障害診断書に「自覚症状」を記入する欄があります。後遺障害診断書に書かれていない自覚症状は、後遺障害の認定で考慮されません。医師にきちんと自覚症状を伝えていないと、後遺障害診断書の「自覚症状」欄にきちんと自覚症状が記載されません。
必要な検査を受けているか?
むち打ちに限ったことではありませんが、後遺障害の認定において必要とされる検査は、必ずしも治療に必要な検査ではないことがあります。そのため、後遺障害の認定に必要な検査が実施されないことがあります。後遺障害の認定に必要な検査は、医師に検査をお願いする必要があります。
後遺障害診断書の記載が症状と合っているか?
後遺障害診断書は、医師が作成します。後遺障害診断書の記載が、自覚症状と合致していないことがあります。
その原因は、様々ですが、医師にきちんと自覚症状を伝えているにもかかわらず、後遺障害診断書の記載が一致しない場合は、訂正してもらうなど対応が必要になります。
保険会社任せにしすぎていないか?
交通事故の後遺障害認定は、自賠責保険会社が行います。実際は、損保料率算出機構の調査事務所が後遺障害の認定を行っています。
後遺障害の申請は、①保険会社が示談交渉のために行う事前認定と②被害者が自ら自賠保険会社に請求する被害者請求があります。
①事前認定は、保険会社に後遺障害診断書さえ提出すれば、あとの手続きは全て保険会社がやってくれます。しかし、保険会社は必要最低限の書類・資料しか提出しません。むち打ちのような他覚所見がない場合は、後遺障害が認定されない非該当になりやすいと言われています。また、保険会社がどんな資料を提出したのかが、被害者には、わからないという問題もあります。
弁護士に相談した方がいい場合
こんな場合は、弁護士に相談するのをお勧めします。
- MRIで異常なしと言われた
- 痛み・しびれが残っている
- 後遺障害診断書の内容が不安
- 非該当になった
後遺障害について、よくある質問
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他覚所見とは?

ウサラ 他覚所見って何?
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にゃソラ MRIなどの画像所見や腱反射などの神経学的検査のことだよ。
後遺障害の認定における他覚所見とは、医師の所見が、客観的な検査によって裏付けられるものを言います。具体的には、MRIなどの画像所見が代表です。腱反射などの神経学的検査も他覚所見の例です。
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MRIで異常がない

ウサラ MRIに異常がないと、後遺障害は認められないの?
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にゃソラ むち打ちの場合は、後遺障害等級14級9号が認定される可能性があります。
後遺障害の認定は、基本的に、自覚症状が他覚所見により客観的に裏付けられていることが必要です。しかしながら、むち打ちの場合は、MRIで異常がない場合でも症状経過、治療経過から後遺障害等級14級9号が認定されることがあります。
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むち打ちで他覚所見がある場合は?

ウサラ むち打ちで他覚所見がある場合は、後遺障害等級は何級?
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にゃソラ 12級13号が認定される可能性があるよ。
むち打ちで、症状に応じた「脊髄や神経根への明らかな圧迫所見」と「深部腱反射テストの低下の所見」がある場合は、後遺障害等級12級13号が認定される可能性があります。
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むち打ちで他覚所見がない場合

ウサラ むち打ちで他覚所見がない場合、何が重視されるの?
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にゃソラ 症状の推移と治療経過などが重視されるよ。
むち打ちの後遺障害認定では、様々な事情が考慮されます。事故態様、症状の推移、治療経過などが重視されます。
経験上、事故後、早期にMRI画像を撮影している場合、痛み止めだけでなく、より強い薬を処方されている場合は、後遺障害が認定されやすいと思います。
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後遺障害診断書で注意すべき点

ウサラ 後遺障害診断書で注意すべき点は?
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にゃソラ 後遺障害診断書の記載内容が、自覚症状と合致してるか?だよ。
自覚症状と他覚症状・検査結果の記載が、実際の症状や検査結果と整合しているかを確認することが重要です。
後遺障害認定に不安のある方へ
交通事故の後遺障害認定では、症状の内容だけでなく、画像所見・神経学的検査・治療経過との整合性が重要です。
「MRIに異常なしと言われた」
「痛みやしびれが残っている」
「後遺障害診断書の記載がこれでいいのかわからない」
「非該当になったが納得できない」
このような場合は、後遺障害申請や異議申立てを行う前に、弁護士に相談することをおすすめします。
法律事務所エソラでは、交通事故の後遺障害に関するご相談をお受けしています。

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