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自動車の譲渡と保険金の請求(交通事故の判例)


自動車保険に関して、自動車の譲渡が問題になった最高裁判決を紹介します。

最高裁平成9年9月4日判決

 自動車の売買契約が締結され、自動車の引渡しは終わり、譲受人が自動車を使用していたが、代金は未払で、所有権移転登録が未了であった事案です。自動車保険の約款上の被保険自動車の譲渡の意義が問題となった判決です。

事案の概要

 被上告人は、平成2年3月12日、上告組合との間で、被上告人の所有する自動車について、上告組合の普通共済約款所定の内容により、被共済者を娘Aとする本件共済契約を締結した。

 本件約款一般条項5条1項は、被共済自動車が譲渡された場合であっても、上告組合が承認した場合を除き、共済契約によって生ずる権利及び義務は譲受人に移転しない旨を、同条2項は、上告組合は、被共済自動車が譲渡された後にこれについて生じた事故については、上告組合が承認をした場合を除き、共済金を支払わない旨を規定している。

 Aの友人であったBは、Aから本件被共済自動車を他に売却したいとの意向を聞いており、同年9月4日ころ、Cとの間で、売買代金を15万円とする本件被共済自動車の売買契約を締結し、Aは、Bを介して内金7万5,000円を受領した。被上告人は、そのころAから、本件被共済自動車が売却できるかもしれないという話を聞き、本件被共済自動車の所有権移転登録等は、同年10月ころに残代金の支払を受けるのと引換えに行う予定であった(原審のこの判示は、BとCとの間で締結された本件被共済自動車の売買契約を、被上告人が了承しており、本件売買契約の効力が被上告人に及ぶ趣旨をいうものと解される。)。Cは、それ以前の同年8月下旬ころ本件被共済自動車を被上告人から借り受けていたが、売買契約後もこれを自宅付近に駐車し時々運転していた。

 被上告人とCは、同年10月ころに本件売買契約の残代金をCが支払うのと引換えに被上告人が本件被共済自動車の所有権移転登録手続をすることを予定していたが、Cは、これらが未了であった同年9月18日、本件被共済自動車を運転中、Dら三名に傷害を負わせる交通事故を起こした。

最高裁の判断

 被共済自動車を譲渡する旨の合意が成立し、譲受人に対する右自動車の引渡しがされたことにより、譲受人が右自動車を使用してこれを現実に支配するに至ったときは、被共済自動車を加害車両とする交通事故の発生する危険性の程度がそれまでとは異なることとなるから、上告組合にとっては、新たに自動車共済契約を締結する際に被共済者について行うのと同様に、被共済自動車の譲受人が交通事故を起こす危険性の程度を判断し、共済契約上の権利義務が譲受人に移転することを承認するかどうか、承認する場合には共済掛金の額を幾らにするかを決定し得ることとすることが必要である。本件約款一般条項5条は、上告組合に対しこのような機会を与えるために、譲渡による共済契約上の権利義務の移転を承認するかどうかの選択権を与えるとともに、これを承認しない場合における被共済自動車の譲渡を共済金支払義務の免責事由にすることを明記したものと解するのが相当である。

 本件約款一般条項5条に規定する譲渡がされたというためには、被共済自動車を譲渡する旨の合意が成立し、譲受人に対する被共済自動車の引渡しがされたことにより、譲受人が自動車を使用してこれを現実に支配することをもって足り、被共済自動車の所有権移転時期にはかかわりがなく、その所有権移転登録手続、売買代金の支払など、譲渡契約上の義務の履行がすべて完了したかどうかは、同条項にいう譲渡の有無を左右するものではないと解すべきである。

 本件交通事故当時、被上告人からCへの本件被共済自動車の所有権移転登録手続がされておらず、売買代金も完済されていなかったが、本件売買契約の効力が被上告人に及ぶところ、売買契約後にこれに基づく新たな現実の引渡しはないが、売買契約当時、本件被共済自動車は、既にCの支配内に置かれ同人がこれを使用して現実に支配していたというのであり、被上告人において、その返還を求めておらず、Cにおいても当然のこととして使用していたことからすれば、売買契約に際し、Cに対する簡易の引渡しがあったというべきであるから、これにより、被上告人からCに対し、本件約款一般条項5条に規定する被共済自動車の譲渡がされたということができ、上告組合には、本件交通事故につき被上告人に共済金を支払う義務はないというべきである。 


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