交通事故の損害賠償請求で、重要な証拠になる刑事記録の入手を取上げます。
交通事故で過失相殺が争いになると刑事記録が必要
交通事故の損害賠償請求で、過失相殺が問題になることがあります。最近は、ドライブレコーダーが普及していますが、過失相殺が問題になる場合は、刑事記録が重要な証拠になります。
また、死亡事故の場合、そもそも被害者遺族は、事故態様を把握していないことがあり、刑事記録で事故態様等を確認する必要があります。
刑事記録の中でも、事故時の車両の位置関係などについて記載されている実況見分調書が、事故態様を明らかにする証拠として重要視されます。
では、交通事故の刑事記録をどのように入手すればいいのでしょうか?①起訴された事件の記録なのか、不起訴事件の記録なのか、②起訴された事件の裁判が確定しているのか、確定していないのかによって、入手方法が変わります。ここでいう記録の入手とは、記録の謄写のことです。
捜査中の刑事記録は見れない
捜査段階の記録を閲覧・謄写する方法はありません。少なくとも検察官の起訴・不起訴の処分が決まるまでは、刑事記録を入することはできません。
なお、被害者や被害者遺族が、検察官から加害者の刑事処分について説明を受ける際に、記録を見せてもらえることはあります。
起訴された事件の刑事記録
検察官が公訴提起した事件の刑事記録は、その裁判の確定前か確定後かによって、刑事記録の入手方法が変わります。
裁判確定前の刑事記録
裁判確定前の刑事記録は、事件が係属している裁判所が保管しています。刑事記録の謄写は、記録のある裁判所に申請します。
犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律3条に、記録の閲覧・謄写の規定があります。同規定によると、第1回公判期日後~当該被告事件終結までの間、被害者から訴訟記録の謄写の申出があるときは、検察官と弁護人の意見を聴き、謄写を認める理由が相当でないなどの事情がなければ、刑事記録の謄写をすることができます。
したがって、被害者であれば、被害者参加(刑訴法316条の33)の有無にかかわらず、刑事記録を入手することができます。ただし、条文上は「被告事件終結まで」とされています。また、刑訴法53条1項は、何人も被告事件の終結後、訴訟記録を閲覧することができると規定していますが、謄写については規定していません。
ただし、判決言渡し後に記録の謄写申請をしたところ、事件が終結していることを理由に謄写が認められなかったことは、法律事務所エソラでは今のところありません。
確定後の刑事記録
裁判確定後の刑事記録は、第1審の裁判をした裁判所に対応する検察庁が保管しています。刑事記録の謄写は、記録のある検察庁に申請します。たとえば、刑事裁判が大阪地裁で行われた場合は、大阪地検が記録を保管しています。
刑訴法53条を受けて、刑事確定訴訟記録法4条1項は、検察官は請求があったときは、保管記録を閲覧させなければならないと規定しています。謄写についての規定はありませんが、交通事故の被害者が損害賠償の請求のために刑事記録の謄写を申請し、認められなかったことは今のところ、法律事務所エソラでは経験していません。
不起訴記録の刑事記録
不起訴記録については,交通事故の被害者であれば,実況見分調書・検証調書・写真撮影報告書などの客観的証拠については,閲覧・謄写が認められています。
不起訴記録については,法律ではなく,法務省の通達を根拠に閲覧・謄写が認められています。不起訴記録は検察庁に保管されているので,記録のある検察庁に謄写申請をします。