死亡事故の場合,相続人が請求権者

 交通事故で被害者がお亡くなりになる死亡事故は,被害者が亡くなっているので,被害者の損害賠償請求権を相続した相続人が請求権者になります。

 相続人の範囲は,民法に規定があります。

 まず,配偶者は常に相続人になります。配偶者以外の相続人は,以下の順で相続人となります。

 ①子ども

 ②直系尊属

 ③兄弟姉妹

 配偶者以外の相続人は,第1順位の相続人がいなければ,第2順位,第2順位の相続人もいなければ,第3順位の相続人が相続することになります。

自賠責は相続人以外も請求できる

 自賠責保険は,被害者本人の慰謝料とは別に遺族の慰謝料を損害として積算します。遺族の範囲は,被害者の父母,配偶者,子どもです。

 民法の相続人の範囲と必ずしも一致しないことに注意が必要です。

近親者の慰謝料請求

 民法711条は,近親者の慰謝料請求権について規定しています。711条は,被害者の父母,配偶者,子どもが請求権者として規定されています。

 この慰謝料は,近親者固有の慰謝料であり,亡くなった被害者の慰謝料請求権を相続したものではありません。自賠責と同様,相続人の範囲と一致しないので注意が必要です。

その他の親族は?

 民法711条に規定されているのは,父母,配偶者,子です。では,その他の親族は,慰謝料を請求することはできないのでしょうか?

 判例は,被害者との間に民法711条で規定されている者と実質的に同視することもできる身分関係が存在すれば,固有の慰謝料を請求できると解しています(最高裁昭和49年12月17日判決)。

 実務上,祖父母,孫,兄弟姉妹が問題となります。被害者との間に特別に緊密な関係があったかどうかが問題となり,その点の主張・立証が必要になると指摘されています。

 なお,当事務所の弁護士は,被害者の祖母に固有の慰謝料を認めた大阪地裁平成27年1月15日判決(交民集48巻1号60頁)を獲得しています。同判決は,民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準(通称,赤本)の裁判官の講演録にも取上げられています。

請求権者の全員が関与するのが望ましい

 死亡事故の場合,損賠請求請求権者が複数の人になることが通常です。請求権者が相続人だけとは限らず,全員の足並みがそろわないことがあります。民事裁判では,和解で解決に至ることも多く,訴訟に請求権者,全員が関与することが望ましいといえます。