交通事故の損害賠償の内、付添看護費を取上げます。
付添看護費とは?
付添看護費は、①入院付添費と②通院付添費に分けることができます。
①入院付添費は、被害者が入院中に職業付添人又は、近親者が付添った場合の損害をどう算定するのか?という問題です。
②通院付添費は、被害者の通院に付き添った場合の損害をどう算定するのか?の問題で、主に近親者の付添が問題になります。
付添看護費が損害賠償で問題になる理由
平成8年4月以降、都道府県知事の承認を受けた医療機関のみで付添看護が認められるようになり、平成9年9月末に、すべての病院で付添看護が廃止されました。これ以降、病院関係者によって、看護がまかなわれることになりました。
病院が完全看護態勢をとっている中で、なお近親者や職業付添人による看護が必要なのか?ということが、交通事故の損害賠償において問題になります。
付添看護費が損害として認められるには?
大阪地裁の損害賠償の算定基準では、①医師の指示があった場合又は②症状の内容・程度、被害者の年齢等から付添看護の必要性が認められる場合に、被害者本人の損害として認められます。
つまり、病院が完全看護態勢をとっていても、症状の内容・程度、被害者の年齢により近親者の付添看護費が損害として認められることがあります。
重傷の場合や、被害者が幼児や児童の場合は、付添看護の必要性が認められやすいといえます。特に、幼児や児童の場合、医学上の判断とは別に、社会通念上付添の必要性が認められるとの指摘もあります。なお、自賠責保険では被害者が12歳以下の場合、入院付添費・通院付添費ともに損害として認めています。
完全看護といっても、病院の看護態勢は病院によって異なるので、看護実態を踏まえて必要性を主張・立証していくことになります。
付添看護費の損害額
付添看護費が、損害として認められる場合の損害額は、大阪地裁の損害賠償の算定基準では、以下のとおりです。
付添看護費の大阪地裁の損賠請求算定基準
(1)職業付添人を付けた場合は、必要かつ相当の実費が損害額
(2)近親者の付添看護費は、①入院付添の場合1日6,000円、②通院付添の場合1日3,000円が損害額
付添看護費の算定の注意点
近親者の付添看護費は,交通費・雑費・その他付添看護に必要な諸経費を含んだ金額です。基準額に,これらの費用を加算して損害額とは,原則として認められません。
なお,近親者が仕事を休んで付添った場合,休業による損害と基準額のどちらか高い方が損害額となります。この場合,当然,勤務先の証明が必要になります。ただし,被害者との身分関係等から必ずしもその近親者が付添う必要はなく,職業付添人で足りる場合には,職業付添人に支払う実費が限度になることがあります。
近親者の付添看護の内容が,食事や排せつの介助を行っていたり,長時間の付添を要していた等,負担が重い場合に比べて,比較的軽い場合は,損害額は基準額を下回る可能性が高いです。