むち打ち以外の神経症状の後遺障害による逸失利益の算定では、労働能力喪失期間はむち打ちと同じように制限されるのでしょうか?
むち打ちの労働能力喪失期間は制限される
後遺障害による逸失利益の算定に当たって、労働能力喪失期間の終期は67歳までとするのが原則です。しかし、後遺障害がむち打ちの場合は、14級で5年、12級で10年に労働能力喪失期間が制限されます(労働能力喪失期間参照)。
神経症状の後遺障害はむち打ちだけではない
局部の神経症状を残すとして後遺障害が認定されるのは、むち打ちに限りません。たとえば、骨折後の痛みで12級や14級が認定されることがあります。
このような、むち打ち以外の神経症状で14級・12級に該当する場合、労働能力喪失期間は、むち打ちと同様に制限されるとの主張がなされることがあります。
裁判例の傾向
裁判例は、労働能力喪失期間をむち打ちと同様に制限したものと、そうでないものに分かれています。労働能力喪失期間をむち打ちと同様に制限しなかった場合、12級と14級で次のような違いが見受けられます。
後遺障害12級の場合
労働能力喪失期間を10年以下に制限しなかった場合は、労働能力喪失期間の終期は就労可能年数までとした裁判例が多く見受けられます。
後遺障害14級の場合
労働能力喪失期間を5年以下に制限しなかった場合でも、就労可能年数まで労働能力喪失期間を認めた裁判例は、あまり多くないという傾向があります。
神経症状の労働能力喪失期間の考え方
症状固定後に症状の改善がみられる場合は、当然、労働能力喪失期間は制限されることになるでしょう。症状固定後、相当期間経過しても改善が見られない場合は、労働能力喪失期間は、制限されない方向に傾くことになると思われます。
自賠責の後遺障害の等級に、該当しないものの関節の機能障害も残っている場合は、労働能力喪失期間は制限されない方向へ傾くと思われます。また、神経症状が疼痛を中心とする場合は、労働能力喪失期間は、制限する方向になると思われます。
被害者が高齢者であれば、就労可能年数まで労働能力喪失期間が認められやすく、被害者が若年者であれば、就労可能年数まで労働能力喪失期間が認められにくいでしょう。
神経症状といっても、脊髄損傷の場合は、症状が改善することは考えにくく、労働能力喪失期間が制限されない方向に傾くと考えられます。