後遺障害による逸失利益の算定に当たって,労働能力喪失率は自賠責の後遺障害等級に応じて,労働能力喪失率表に当てはめ認定されるのが通常です。労働能力喪失が争われる後遺障害の類型があります。今回は,そのうちの脊柱変形障害を取り上げます。

脊柱変形障害

 脊柱に著しい変形を残すものは6級5号,脊柱に中程度の変形を残すものは8級相当,脊柱に変形を残すものは11級7号が認定されます。

 平成16年6月30日までは,脊柱変形障害は,6級と11級の2段階で認定されていましたが,平成16年7月1日以降,8級相当が加えられ3段階で認定されるようになりました。

 平成16年6月30日までの脊柱変形障害の後遺障害の認定において,6級が認定されるのは労働能力の低下の過大評価だとして,労働能力喪失が認められるかどうかが争われてきました。

脊柱変形障害は労働能力を喪失しないのか?

 脊柱には支持性と運動性という相反する機能があります。脊柱の損傷はその機能を減少させます。脊柱の後部諸靭帯を含む脊柱周囲靭帯,椎間板は脊柱支持機構としての重要な役割を果たしています。靭帯,椎間板は高度損傷を受けると完全な修復は望めません。

 靭帯,椎間板の高度損傷は脊柱の変形,不安定性を残しやすいと言われます。脊柱が損傷すると,後部諸靭帯・椎間板の力学的制御機構が破壊され,進行性の脊柱変形が生じます。

 また,脊柱の変形が高度になれば,疼痛・心肺機能障害,神経症状が出現することもあります。受傷早期には,脊椎の骨折部の疼痛が生じ,安静により軽減するも動揺により増強します。被害者は脊柱の圧迫骨折した局所に慢性期において疼痛と疲れやさの症状が見られます。

 以上のことからすると,高度の脊柱変形は,脊柱の骨折という器質的損傷という脊柱の支持性と運動性の機能を減少させ,局所に疼痛を生じさせることがあるので,労働能力喪失率表どおりの労働能力喪失率が認められることが多いといえます。

労働能力喪失率の判断要素

 脊柱の変形が軽微な場合は,労働能力喪失率表どおりの労働能力喪失率を認めるのが妥当ではないことがあります。労働能力喪失率の判断要素としては,被害者の年齢・性別・職業,骨折の部位・程度,骨折自体の安定性の有無,神経症状の有無,脊髄障害の有無,治療法の適否,固定術の方法などを総合考慮することになります。

 特に,被害者が若年者の場合,脊柱の圧迫骨折の局所に疼痛が残存していても,緩解し,将来的に消失する可能性があることから,労働能力喪失期間の終期まで労働能力喪失率表どおりの労働能力喪失率が認められないことがあります。