後遺障害による逸失利益の算定が問題となる後遺障害に、臭覚・味覚障害があります。
臭覚・味覚障害
臭覚・味覚障害は、臭覚・味覚脱失が12級相当に、臭覚・味覚減退が14級相当に位置付けられています。後遺障害等級12級の労働能力喪失率は14%、14級の労働能力喪失率は5%というのが基準になっています。
臭覚・味覚障害の労働能力への影響
後遺障害による逸失利益は、被害者の後遺障害による労働能力喪失を前提にしています。臭覚・味覚障害の後遺障害による逸失利益の算定においても、性別、年齢、減収の程度、臭覚・味覚障害の職業に対する具体的な影響等の諸事情を考慮して判断されます。このこと自体は、他の後遺障害と共通する事情です。臭覚・味覚障害の場合は、被害者の職業等との関連が特に重要になります。
職業等との関連
被害者が料理人、ソムリエ、溶剤を扱う職人等の臭覚・味覚が仕事の可否や内容に直結する職業に従事している場合は、臭覚・味覚障害の労働能力に対する影響は明らかです。
したがって、被害者がこのような職業に従事している場合は、実態に合わせて労働能力喪失率を判断することになるでしょう。
また、被害者が家事従事者の場合も家事労働に対する影響があると認められるので、臭覚・味覚障害による逸失利益が認められることになります。
被害者が、これら以外の職業に従事している場合は、臭覚・味覚障害による労働能力に対する具体的な影響はあまりないと考えられます。そのため、後遺障害による逸失利益が否定される傾向にあります。後遺障害による逸失利益が否定される場合、臭覚・味覚障害による日常生活上の不都合や不利益等を考慮して、後遺障害による慰謝料の増額事由になる余地があります。