後遺障害による逸失利益が問題となる後遺障害として脾臓喪失を取り上げます。

脾臓喪失の後遺障害

 交通事故によって脾臓を喪失した場合,現在は,自賠責保険では13級11号が認定されます。労働能力喪失率表は,後遺障害13級の労働能力喪失率を9%としています。

 かつては,労働能力喪失率45%の8級11号が認定されていました。

脾臓の喪失による影響は?

 脾臓は,左上腹部,横隔膜直下,胃の左後上方,第9~11肋骨の前面に位置し,後方は左副腎・左腎に,下方は膵尾・脾結腸曲に接して,靭帯で固定されているリンパ性器官です。

 脾臓の機能は複雑で不明な点が多いと言われていますが,①血液の貯留機能,②老朽赤血球・血小板の破壊,③リンパ装置としての生体防御機能の3つの機能を有していると言われています。脾臓を取り除いても,他の器官がその機能を代替することから,労働能力に影響しないのではないか?という議論がされてきました。

労災の専門検討会

 前述のとおり,脾臓損傷はかつては後遺障害等級8級と認定されていましたが,労災の認定基準の改訂により13級となりました。労災の認定基準改定に当たって,専門検討会では次のように指摘されています。

 脾臓摘出の影響は基本的にはなく,あっても軽微であると考えられる。脾臓の摘出は頻繁に行われているが,後遺症状は特に報告されていない。

 したがって,脾臓を喪失した場合,特に症状として現れないので,脾臓の喪失により職種制限や業務の制限が生じるものではない。

 ただし,脾臓は人体最大のリンパ器官であるから,全く影響がないというわけではない。脾臓は,肺炎球菌や髄膜炎菌などの細菌に対して有効な防御機能を有している。脾臓を摘出した患者は,特に肺炎球菌,髄膜炎菌,インフルエンザ菌による感染症にり患しやすいとされている。

脾臓損傷の労働能力喪失率

 脾臓は医学的に取り除いてもその機能は他の器官で代替するので,人体に影響しないとされていますが,免疫機能を一定程度低下させて感染症にり患する危険性を増加させることがあります。

 免疫機能の低下を重視すると,脾臓損傷は労働能力を喪失すると考えられます。現在の脾臓損傷の後遺障害等級は13級で労働能力喪失率は9%なので,おおむね,労働能力喪失率表どおりの労働能力喪失率が認定されるのではないかと考えられます。