自賠責保険と遅延損害金の関係を判断した最高裁判決を紹介します。
最高裁平成12年9月8日判決
自賠責保険を損害賠償の元本に充当した後、交通事故日から支払日までの間の確定遅延損害金を請求できるか?が問題になった事案です。
事案の概要
平成2年11月10日に発生した交通事故で死亡したAの相続人である上告人らが、加害車両の運転者である被上告人Bに対し民法709条に基づき、同車両の保有車である同Cに対し自賠法3条又は民法715条1項に基づき、損害賠償を請求する訴訟である。
上告人らの請求の趣旨は、被上告人らに対し、連帯して、上告人X1に対し5,624万3,270円、同X2に対し4,497万1,878円及びこれらに対する平成2年11月10日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求めるものである。
上告人らは、自賠法に基づく保険金として合計2,510万6,245円の支払を既に受けている。
最高裁の判断
最高裁は、遅延損害金の請求を認めました。
不法行為に基づく損害賠償債務は、損害の発生と同時に、何らの催告を要することなく、遅滞に陥るものであって、後に自賠法に基づく保険金の支払によって元本債務に相当する損害がてん補されたとしても、てん補された損害金の支払債務に対する損害発生日である事故の日から支払日までの遅延損害金は既に発生しているのであるから、遅延損害金の請求が制限される理由はない。
したがって、本件においては、自賠法に基づく保険金によりてん補された損害額に対する本件事故発生日から保険金支払日までの遅延損害金請求は当然に認容されるべきである。
上告人らの請求は、原審が認容したところに加えて、保険金によりてん補された損害額各1,255万3,122円に対する本件事故発生日である平成2年11月10日から保険金支払日である同4年3月25日までの民法所定の年5分の割合による遅延損害金のうち上告人らが請求する各86万1,054円(円未満切り捨て)の支払を求める限度で認容すべきである。