非器質性精神障害について、自賠責が準拠している労災の後遺障害認定基準を取上げます。
非器質性精神障害
非器質性精神障害は、脳の器質的損傷を伴わない精神障害のことです。PTSDなど非器質性精神障害をもたらしているのは、脳です。しかし、器質的損傷を伴っていないので、労災保険・自賠責保険では、器質的精神傷害とは区別し、非器質性精神障害として評価します。
非器質性精神障害として、後遺障害と認められた場合の後遺障害等級は、9級・12級・14級のいずれかです。
非器質性精神障害の後遺障害認定基準
非器質性精神障害が後遺障害と認められるには、①以下の精神症状のうち1つ以上の精神症状が見られること、②能力に関する判断項目のうち1つ以上の障害が見られることが必要です。
精神症状
以下の6つの症状のうち、いずれか1つが見られることが必要です。
非器質性精神障害が後遺障害と認められる要件としての精神症状
①抑うつ状態
②不安の状態
③意欲低下の状態
④慢性化した幻覚、妄想性の状態
⑤記憶又は知的能力の障害
⑥その他の障害(衝動性の障害など)
能力に関する判断項目
以下の8つの判断項目のうち、1つ以上の能力に障害が見られることが必要です。
非器質性精神障害が後遺障害と認められる要件としての能力の障害
①身辺日常生活
②仕事・生活に積極性、関心を持つ
③通勤・勤務時間の遵守
④普通に作業を持続する
⑤他人との意思伝達
⑥対人関係、協調性
⑦身辺の安全保持、危機の回避
⑧困難、失敗への対応
障害の程度に応じた認定
非器質性精神障害の後遺障害等級は、前述のとおり、9級・12級・14級の3つです。それぞれの認定基準は次のとおりです。なお、労災では就労している者(就労意欲のある者を含む)と就労意欲の低下・欠落により就労していない者に区分して認定を行います。
後遺障害等級9級
通常の労務に服することはできるが非器質性精神障害のため、就労可能な職種が相当程度に制限されるものは、9級と認定されます。
就労している者については、上記の能力に関する判断項目のうち②~⑧のいずれか1つの能力が失われているもの又は判断項目の4つ以上にしばしば助言・援助が必要とされる障害を残しているものを意味します。
就労していない者については、身辺日常生活について時に助言・援助を必要とする程度の障害が残存しているものを意味します。
後遺障害等級12級
通常の労務に服することはできるが、非器質性精神障害のため、多少の障害を残すものは、12級と認定されます。
就労している者については、能力に関する判断項目の4つ以上について時に助言・援助が必要と判断される障害を残しているものを意味します。
就労していない者については、身辺日常生活を適切又は概ねできるものを意味します。
後遺障害等級14級
通常の労務に服することはできるが、非器質性精神障害のため、軽微な障害を残すものは、14級と認定されます。能力に関する判断項目の1つ以上について時に助言・援助が必要と判断される障害を残しているものを意味します。