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交通事故の損害賠償請求の消滅時効の起算点


交通事故の損害賠償の消滅時効を取上げます。

交通事故の損害賠償の消滅時効

 交通事故の損害賠償の消滅時効期間は、改正前民法では、「損害を及び加害者を知った時」から3年間です。改正民法施行後は、人損については5年間になります。

 物損事故の場合、加害者・損害の発生が明確であることが多く、消滅時効が問題になることは、ほとんどないと考えられます。人損の場合、症状固定までに長期間経過したり、後遺障害が事故から長期間経過して顕在化することがあり、消滅時効が問題になることがあります。

消滅時効の起算点

 前述のとおり、消滅時効の起算点は、被害者等が「損害及び加害者を知った時」です。ここでいう被害者は、損害賠償請求権を取得する者を意味し、被害者本人の他に相続人等の承継人を含みます。

損害を知った時

 損害を知った時とは、被害者がその損害の程度又は数額を知る必要はないが、損害の発生を現実に知っていることが必要であると解されています。

 人損事故の場合、消滅時効の起算点について、どの時点で「損害を知った時」といえるのかが問題となることがあります。

学説の見解

 学説は、おおむね以下の3つの考え方があります。

 (1)事故時に予見可能な損害かどうかで区別し、事故時に予見可能な損害は事故時から消滅時効が進行する。

 (2)症状固定の診断を受けた時から消滅時効が進行する。

 (3)症状固定時から消滅時効が進行する。

近時の裁判例の傾向

 消滅時効の起算点に関する最高裁判決は、別に取上げるとして、下級審の裁判例の傾向に言及しておきます。

 交通事故で受傷後の治療は、症状の経過を確認して行われ、後遺障害の内容も治療経過等に関連すること、損害額の算定において後遺障害の具体的な内容、症状固定日が密接に関連することから、消滅時効の起算点を次のように解する傾向にあります。

 (1)後遺障害が残存しない場合、治療終了時から傷害に関するすべての損害について消滅時効が進行する。

 (2)後遺障害が残存する場合、症状固定時から後遺障害に基づくものを含むすべての損害について消滅時効が進行する。

加害者を知った時

 加害者を知った時とは、損害賠償請求が事実上可能な程度に知ることに至ったことと解されています。


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