交通事故で骨盤骨折を負った場合、骨折そのものは治癒しても、痛みやしびれ、歩きにくさ、股関節の動かしにくさ、骨盤の変形などが残ることがあります。
骨盤は体を支える重要な部分で、損傷の程度によっては、日常生活や仕事への復帰に大きな影響が出ることもあります。また、骨盤の変形や脚長差、生殖機能への影響が問題になることもあります。
この記事では、交通事故による骨盤骨折で残りやすい症状と、後遺障害として何級が認定される可能性があるのか、認定で確認されやすいポイントを解説します。
- 1. 骨盤骨折とは?
- 1.1. 骨盤は体を支える重要な骨
- 1.2. 交通事故では大きな外力で骨折することが多い
- 1.3. 骨盤骨折の分類
- 1.3.1. ①Type A
- 1.3.2. ②Type B
- 1.3.3. ③Type C
- 1.4. 骨盤骨折の治療
- 2. 骨盤骨折で残りやすい症状
- 3. 骨盤骨折の後遺障害は何級になる?
- 3.1. 股関節の動きが悪くなった場合
- 3.2. 痛み・しびれが残った場合
- 3.3. 骨盤骨の変形が残った場合
- 3.4. 脚長差が残った場合
- 3.5. 生殖機能の障害
- 4. 骨盤骨折の後遺障害認定のポイント
- 4.1. レントゲン・CT・MRIなどの画像所見
- 4.2. 画像所見以外の他覚所見
- 4.3. 痛みやしびれの一貫性
- 4.4. 後遺障害診断書の記載内容
- 5. 骨盤骨折は様々な後遺障害が残る可能性があります
骨盤骨折とは?
骨盤骨折は、腸骨・恥骨・坐骨・仙骨・尾骨等で構成される骨盤に、強い外力が加わることで生じる骨折です。

骨盤は体を支える重要な骨
骨盤は腸骨、坐骨、恥骨などが組み合わさった複雑な構造をしています。また、体幹を支えるため骨盤輪を形成し、強固な安定性を有しています。
交通事故では大きな外力で骨折することが多い
骨盤の外傷は、交通事故等の高エネルギー外傷がほとんどです。交通事故では、車両の衝撃により高エネルギー性の骨盤骨折が生じることがあります。
骨盤骨折は、数ある骨折の中でも、致死率が最も高い骨折と言われています。骨盤自体に豊富な血行のため骨折部位からの出血に加え、骨盤内臓器の合併、特に動脈損傷・静脈叢損傷により、出血性ショックとなることがあります。
骨盤骨折の分類
骨盤骨折は、骨盤の安定性による分類、骨盤に加わった外力の方向による分類、重症度による分類と様々な観点から分類されます。
Tile分類は、骨盤の不安定性とその方向性を重視した分類です。安定型と不安定型に大別することができます。不安定型は、骨盤の前方・後方成分両方に骨折・脱臼が生じ、骨盤輪が破綻しているので、骨盤輪の安定を早期に計る必要があります。
①Type A
回旋、垂直方向ともに安定している。
Type Aの分類
A1:骨盤輪を含まない骨盤骨折、腸骨翼の単独骨折、上・下前腸骨棘、坐骨結節の剥離骨折が含まれます。
A2:骨盤輪の骨折で転移がなく安定しているもの
②Type B
回旋は不安定、垂直方向は安定しているもの。
Type Bの分類
B1:Open book型損傷、骨盤の前後方向の圧迫力により恥骨結合が離開または恥骨枝が骨折し、片側骨盤が外側へ回旋するような変形を生じるとともに、仙腸関節前方が開くように障害を受ける。片側骨盤は外旋方向に不安定となるが、仙腸関節後方構造は保たれているので、垂直方向に安定である。障害は片側のみ又は両側同時に生じる。
B2:骨盤の側方の圧迫力により、片側骨盤には内側へ回旋するような変形が加わり仙腸関節前方が圧潰されるとともに、同側の恥骨枝に骨折が生じる。仙腸関節後方構造が保たれているので、垂直方向は安定している。
B3:片側骨盤は内側へ回旋する。前方の骨折は主として反対側の恥骨枝に生じるが、両側の4枝に生じることもある。片側骨盤は内旋するとともに上方回旋も加わるので、下肢短縮が生じることがある。仙腸関節後方構造が保たれているので、垂直方向は安定している。
③Type C
回旋方向、垂直方向ともに不安定
Type Cの分類
C1:前方骨折とともに、後方仙腸構造、仙棘靭帯、仙結節靭帯を含めた広範な骨盤損傷により、回旋不安定性とともに垂直方向の不安定を生じる。
C2:Type C1の損傷が両側に生じたもの
C3:Type C1、C2の骨盤輪損傷に臼蓋骨折を合併したもの
骨盤骨折の治療
TypeAは、保存的治療が選択されます。2~3週間は、安静必要です。
TypeBで徒手整復可能な場合は、保存的療法を選択します。その他は、創外固定を用いた整復固定か、プレートを用いた内固定術を行います。骨癒合までは、3か月程度と言われています。
TypeCは、創外固定又は内固定が選択されます。骨癒合には、3か月程度かかります。
骨盤骨折で残りやすい症状
骨盤骨折では、以下のような症状が見られます。
骨盤骨折の主な症状
痛み、痺れの神経症状
歩きにくさ・立ち上がりにくさ
股関節の動かしにくさ
骨盤の変形
脚の長さの違い
排尿・排便・生殖機能への影響
骨盤骨折の後遺障害は何級になる?
骨盤骨折で想定される後遺障害として、以下のような障害があります。
股関節の動きが悪くなった場合
骨盤骨折が股関節周辺に影響し、股関節の可動域制限が残る場合は、下肢の三大関節の機能障害として等級が問題になります。
股関節の可動域制限の後遺障害等級
股関節がほぼ動かない→関節の用廃:8級7号
健側の2分の1以下に制限→関節の機能に著しい障害:10級11号
健側の4分の3以下に制限→関節の機能に障害:12級7号
痛み・しびれが残った場合
骨折後の痛みやしびれが残る場合は、神経症状として12級13号または14級9号が問題になります。
12級と14級の違いは、他覚所見の有無です。画像所見など他覚所見がある場合は12級、他覚所見がない場合は14級が問題になります。
骨盤骨の変形が残った場合
骨盤骨折による変形が、裸体となったとき、変形が明らかにわかる程度であれば12級5号が認定されます。
脚長差が残った場合
骨盤の変形治癒などにより、左右の脚の長さに差が出ることがあります。
| 5センチ以上短縮 | 8級5号 |
| 3センチ以上短縮 | 10級8号 |
| 1センチ以上短縮 | 13級8号 |
下肢の短縮の有無は、上前腸骨棘と下腿内果下端間の長さを健側の下肢と比較することによって行います。
生殖機能の障害
骨盤骨折では、骨盤の変形や骨盤内臓器の損傷により、生殖機能への影響が問題になることもあります。
女性の場合、腟口狭窄を残すもの(陰茎を腟に挿入できないものに限る)は、準用9級が想定されます。骨折により狭骨盤又は比較的狭骨盤(産科的真結合線が10.5㎝未満又は入口部横径が11.5㎝未満)は、準用11級が想定されます。
骨盤骨折の後遺障害認定のポイント
骨盤骨折では、上記のように様々な後遺障害が想定されます。整形外科だけではなく、産婦人科など他の診療科の医師による診断等も必要になるケースがあります。
レントゲン・CT・MRIなどの画像所見
骨盤骨折の後遺障害の認定で最も重要なのは、レントゲン・CT・MRIなどの画像所見が存在することです。
画像所見以外の他覚所見
後遺障害の認定に当たっては、レントゲン・CT・MRIなどの画像所見以外の他覚所見も必要になります。神経学的検査を定期的に受けていることが重要です。
痛みやしびれの一貫性
交通事故直後から症状固定までの間、継続的に通院し、カルテに症状が記載されていることが重要です。特に、神経症状による後遺障害の認定は、症状の一貫性が重視されます。
後遺障害診断書の記載内容
後遺障害の認定に際して、後遺障害診断書は重要です。後遺障害診断書に記載のない症状は、後遺障害として考慮されません。自覚症状がきちんと後遺障害診断書に記載されているか?を確認する必要があります。
股関節の可動域角度や左右の脚の長さについて、きちんと測定した結果が記載されているか?も確認する必要があります。
骨盤骨折は様々な後遺障害が残る可能性があります
骨盤骨折は、骨折部位や治療経過によって、痛み・しびれ、骨盤の変形、股関節の動かしにくさ、歩きにくさ、脚長差などの後遺症が残ることがあります。
後遺障害としては、骨盤骨の変形による12級5号、神経症状による12級13号・14級9号、股関節の機能障害、脚長差、生殖機能への影響などが問題になります。
後遺障害に該当するかは、骨折の部位、画像所見、可動域検査、症状の経過、後遺障害診断書の記載内容などによって判断されます。
骨盤骨折後の痛みや歩きにくさが残っている方、後遺障害等級や示談金額に不安がある方は、示談前に一度、交通事故に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。

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