未成年の自転車事故と親の監督責任(交通事故の裁判例)

未成年者が自転車運転中に起こした交通事故につき,親の監督責任が問題になった裁判例を紹介します。

神戸地裁平成25年7月4日判決

 夜間,小学生である被告の息子の運転する自転車が,歩行中の原告と正面衝突した事故につき,親の監督責任が一部,認められた事案です。

事案の概要

 原告X1は,昭和21年生まれの女性であり,本件事故当時62歳であった。原告X1につき,本件事故後の平成23年7月1日,神戸家庭裁判所の後見開始の審判がなされ,夫であるAが唯一の成年後見人に選任された。

 Cは,平成9年生まれの男性であり,本件事故当時11歳の小学5年生であった。被告は,昭和48年生まれの女性であり,Cと同居し,その唯一の親権者・母親である。

 平成20年9月22日午後6時50分ころ神戸市北区内で,原告X1が,本件事故現場付近の道路の西側を南から北に歩いていたところ,対向して北から南に走行してきたC運転の被告自転車と,正面衝突した。

 原告X1は,本件事故により,急性硬膜下血腫,脳挫傷,頭蓋骨骨折等の傷害を負い,神戸赤十字病院において,急性硬膜下血腫,広範囲脳挫傷,水頭症につき,意識障害(植物状態),開眼するも意思疎通不可,四肢拘縮(四肢可動不可)等の症状を残して,平成21年3月22日に症状固定したとの診断を受けた。

裁判所の判断

 Cは,本件事故当時11歳の小学生であったから,未だ責任能力がなかったといえ,本件事故により原告X1に生じた損害については,Cの唯一の親権者で,Cと同居してその監護に当たり,監督義務を負っていた被告が,民法714条1項により賠償責任を負うものといえる。

 被告は,Cに対し,日常的に自転車の走行方法について指導するなど監督義務を果たしていた旨主張するが,Cの加害行為及び注意義務違反の内容・程度,また,被告は,Cに対してヘルメットの着用も指導していたと言いながら,本件事故当時はCがこれを忘れて来ていることなどに照らすと,被告による指導や注意が奏功していなかったこと,すなわち,被告がCに対して自転車の運転に関する十分な指導や注意をしていたとはいえず,監督義務を果たしていなかったことは明らかである。