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自賠責保険の支払基準に関する最高裁判決②(交通事故の判例)


自賠責保険の支払基準に裁判所が拘束されるか?を判断した最高裁判決を紹介します。

最高裁平成24年10月11日判決

 加害者が訴訟を提起し、自賠責保険金を請求した場合、裁判所が自賠責保険の支払基準に拘束されるか?が問題になった事案です。

 なお、被害者請求については、すでに最高裁判決が出ており、裁判所は、自賠責保険の支払基準に拘束されません。(自賠責保険の支払基準に関する最高裁判決参照)。

事案の概要

 平成15年9月18日午前2時10分頃、Aが運転する軽四輪貨物自動車が中央線を越えて対向車線に進行し、Bが所有しCが運転する普通貨物自動車と正面衝突する事故が発生した。Aは、同日、本件事故により死亡した。

 本件事故当時、上記普通貨物自動車につき、上告人を保険者とする自賠責保険契約及び被上告人を保険者とする自動車共済契約(任意保険)が締結されていた。

 上告人は、平成17年3月、Aの相続人らに対し、自賠責保険契約に基づき、1,500万円の損害賠償額を支払った。

 Aの相続人らは、平成18年7月、徳島地方裁判所阿南支部に対し、C及びBを被告として、本件事故によるAの損害賠償金の支払を求める訴訟を提起した。平成20年1月29日、上記訴訟において、Aの相続人らとCらとの間で、要旨次のとおり訴訟上の和解が成立した。

 ①本件事故によるAの損害が合計7,500万円(逸失利益5,400万円、慰謝料2,000万円、葬儀費用100万円)であることを確認する。

 ②本件事故の過失割合につき、Aが6割、Cが4割であることを確認する。

 ③Cらは、Aの相続人らに対し、上記の損害額から過失相殺による減額及び既払額(上記の1,500万円)の控除をした残額1,500万円を連帯して支払う。

 被上告人は、平成20年2月15日、前記(2)の共済契約に基づき、Aの相続人らに対し、上記和解によってCらが支払うべきものとされた1,500万円を支払った。

 被上告人は、平成20年3月28日、上告人に対し、上記の過失割合を前提に、自賠法15条所定の保険金として1,500万円を支払うよう請求したが、上告人は、Aには重大な過失があり、保険金額3,000万円から5割の減額を行うのが相当であるから、上告人はこれ以上保険金を支払う義務を負わないとして、支払を拒絶した。

原審の判断

 Aの損害額を7500万円、Aの過失割合を8割とした上で,次のとおり判断して、被上告人の請求を600万円の限度で認容した。

 支払基準によれば、被害者の過失割合が8割の場合には、保険金額から3割の減額をすべきものとされているから、上告人は保険金額3,000万円から3割減額した金額である2,100万円を支払うべきであったところ、上告人が実際に支払ったのは1,500万円であるから、上告人は、被上告人に対して、その差額600万円を支払うべきである。

最高裁の判断

 最高裁は、加害者の請求の場合も裁判所は、自賠責保険の支払基準に拘束されないと判断しました。

 自賠法16条1項に基づいて被害者が保険会社に対して損害賠償額の支払を請求する訴訟において、裁判所は、自賠法16条の3第1項が規定する支払基準によることなく損害賠償額を算定して支払を命じることができるというべきである。

 自賠法15条所定の保険金の支払を請求する訴訟においても、上記の理は異なるものではないから、裁判所は、上記支払基準によることなく、自ら相当と認定判断した損害額及び過失割合に従って保険金の額を算定して支払を命じなければならないと解するのが相当である。

 原審は、Aの損害額を7,500万円、Aの過失割合を8割としながら、これらを前提とした過失相殺をせず、上記支払基準によれば上告人が2,100万円の保険金を支払う義務があると判断して、被上告人の請求を一部認容したのであり、この判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。上告人は、上記損害額から上記過失割合により過失相殺をした後の1,500万円に相当する損害賠償額を既に支払済みであるから、これ以上保険金を支払う義務を負わない。


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