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自賠責保険の支払基準に関する最高裁判決


自賠責保険の支払基準が裁判所を拘束するか?を判断した最高裁判決を紹介します。

最高裁平成18年3月30日判決

 自賠責保険は、自賠法によって支払基準に従って保険金を支払うよう規定されています(自賠法16条の3第1項)。その支払基準は、「自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済金等の支払基準」です。したがって、この基準に従って、自賠責保険金が支払われます。

 自賠法という法律に基づく自賠責保険の支払基準が、裁判所を拘束するのか?が争われた事案です。

事案の概要

 平成15年10月10日午後5時29分ころ、Aの運転する自動が、道路を横断中のBに衝突する事故が発生した。Bは、本件事故により、死亡した。

  Bの相続人は、Bの夫のCと子の被上告人であったが、平成15年12月6日、Cが死亡し、被上告人がCの遺産を相続した。

  Aは、上告人との間で、本件車両を被保険自動車とする自動車損害賠償責任保険契約を締結していた。

  被上告人は、上告人から、本件事故による損害賠償額の支払として、合計1,809万2,496円の支払を受けた。

 本件は、被上告人が、上記支払額以上に損害賠償額が存在するとして、上告人に対し、自動車損害賠償保障法16条1項に基づいて、本件事故による損害賠償額の残額の支払を請求したという事案です。

最高裁の判断

 最高裁は次のように、自賠責保険の支払基準が裁判所を拘束しないと判断しました。

 自賠法16条の3第1項は、会社が被保険者に対して支払うべき保険金又は法16条1項の規定により被害者に対して支払うべき損害賠償額を支払うときは、死亡、後遺障害及び傷害の別に国土交通大臣及び内閣総理大臣が定める支払基準に従ってこれを支払わなければならない旨を規定している。法16条の3第1項の規定内容からすると、同項が、保険会社に、支払基準に従って保険金等を支払うことを義務付けた規定であることは明らかであって、支払基準が保険会社以外の者も拘束する旨を規定したものと解することはできない。支払基準は、保険会社が訴訟外で保険金等を支払う場合に従うべき基準にすぎないものというべきである。そうすると、保険会社が訴訟外で保険金等を支払う場合の支払額と訴訟で支払を命じられる額が異なることがあるが、保険会社が訴訟外で保険金等を支払う場合には、公平かつ迅速な保険金等の支払の確保という見地から、保険会社に対して支払基準に従って支払うことを義務付けることに合理性があるのに対し、訴訟においては、当事者の主張立証に基づく個別的な事案ごとの結果の妥当性が尊重されるべきであるから、上記のように額に違いがあるとしても、そのことが不合理であるとはいえない。

 法16条1項に基づいて被害者が保険会社に対して損害賠償額の支払を請求する訴訟において、裁判所は、法16条の3第1項が規定する支払基準によることなく損害賠償額を算定して支払を命じることができるというべきである。

 自賠責保険には、交通事故の被害者保護のため、重過失減額といった被害者に有利な制度があります。自賠責保険の支払基準が裁判所を拘束しないということは、被害者に有利にも不利にも働くということに注意が必要です。


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