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被害者の任意保険に対する直接請求に関する裁判例(交通事故の判決)


交通事故の被害者の任意保険に対する直接請求に関する裁判例を紹介します。

仙台高裁平成26年3月28日判決

 交通事故の被害者がどのような場合に、任意保険に対する直接請求ができるか?が争われた事案です。

にゃソラ

任意保険に対する直接請求については、以下の「交通事故における任意保険会社への直接請求」を参照

交通事故における任意保険会社への直接請求

交通事故の相手方の任意保険会社に対して、被害者が直接、損害賠償を請求することができるか?を解説します。

事案の概要

 控訴人が、(1)第1事故について、①被控訴人Y1社に対する自動車損害賠償保障法16条に基づく損害賠償額の支払請求として同法施行令の定める後遺障害保険金額の不足分149万円の支払、及び、②D車に関する任意保険契約上の直接請求権に基づく損害賠償として、訴外Dに対する損害賠償請求権を行使しないことを同人に対し書面で承諾することを条件に、1,686万9,712円及び内1,420万8,688円に対する平成24年10月10日(被控訴人Y1社から第1事故について自賠法の損害賠償額が支払われた日の翌日)からの法定遅延損害金の支払を求め、

 (2)第2事故について、③被控訴人Y2社に対する自賠法の損害賠償額の支払請求として同法施行令の定める後遺障害保険金額の不足分149万円の支払、及び、④被控訴人Y3社に対する任意保険契約上の直接請求権に基づく損害賠償として控訴人が訴外Eに上記②と同趣旨の承諾をすることを条件に313万2,763円及び内295万6,522円に対する同年10月6日(被控訴人Y2社から第2事故に係る自賠法の損害賠償額が支払われた日の翌日)からの法定遅延損害金の支払を求めた。

裁判所の判断

 裁判所は、被害者が加害者に対する損害賠償額の確定等のための手続を取らずに、加害者に対する損害賠償請求権を行使しないことを一方的・抽象的に宣言しただけでは、任意保険会社への直接請求権は発生しないと判断しました。

 D車に付された任意保険及びE車に付された任意保険にはいずれも本件約款の適用がある。本件約款6条は損害賠償請求権者の直接請求権につき、次のとおり定める。

  ②当会社は、次の各号のいずれかに該当する場合に、損害賠償請求権者に対して次項に定める損害賠償額を支払います。ただし、当会社がこの賠償責任条項および一般条項に従い被保険者に対して支払うべき保険金の額(中略)を限度とします。

 (1)被保険者が損害賠償請求権者に対して負担する法律上の損害賠償責任の額について、被保険者と損害賠償請求権者との間で、判決が確定した場合または裁判上の和解もしくは調停が成立した場合

 (2)被保険者が損害賠償請求権者に対して負担する法律上の損害賠償責任の額について、被保険者と損害賠償請求権者との間で、書面による合意が成立した場合

 (3)損害賠償請求権者が被保険者に対する損害賠償請求権を行使しないことを被保険者に対して書面で承諾した場合

 各保険会社は、本件約款6条2項3号所定の承諾書面を、被保険者の損害賠償責任の額を明記してこれが支払われた場合には被保険者に対するその余の請求を放棄する旨の被保険者に対する免責証書として扱っており、これが提出された場合に、同書面は各保険会社を通じて被保険者に送付される。

 各保険会社は、上記免責証書が提出された場合は、上記免責証書記載の金額(保険金の額を上限とする。)を損害賠償請求権者に直接支払う。

 控訴人と訴外D及び同Eとの間で損害賠償責任の額は確定しておらず、控訴人と被控訴人Y1社及び同Y3社との間でも、同損害額につき争いがある。控訴人は、本件訴訟の請求の趣旨において訴外D及び同Eに対する損害賠償請求権を行使しないことを書面で承諾する意向を明らかにしている。

 控訴人は、本件約款6条2項3号に基づき、被控訴人Y1社及び同Y3社に対する直接請求権を行使するのに対し、被控訴人Y1社及び同Y3社は、同号は、被保険者が負う損害賠償責任の額について被害者が同意し、同額につき争いがない状態となった上で、同号所定の書面を提出することを支払条件とするところ、控訴人は一方的かつ抽象的に訴外人らに対する請求権を行使しないことを宣言するというのみであるから、同項に定める支払条件は成就していないと主張する。

 本件約款6条2項3号は、「損害賠償請求権者が被保険者に対する損害賠償請求権を行使しないことを被保険者に対して書面で承諾した場合」を損害賠償額の支払条件としているところ、同号は、同項1号及び2号とは異なり、被保険者と損害賠償請求権者との間で、被保険者が負担する法律上の損害賠償責任の額について、「判決が確定した場合または裁判上の和解もしくは調停」や、「書面による合意」が成立したことを文言上条件として明示していないのであるから、当該条項の文言のみをみると、同号が、保険会社による運用とは異なり、被保険者が負う損害賠償責任の額について争いのない状態となっていることを支払条件とするものではないと解する余地もある。

 しかし、そもそも、自動車対人賠償責任保険は、契約によって定められた事故の発生により、被保険者が第三者に対する損害賠償責任を負担したことにより被る損失をてん補する責任保険の一種であるから、その性質上、保険会社による保険金の給付は、これに先だって、加害者(被保険者)が負担する損害賠償の額が確定していることが論理上前提となるものであるところ、本件約款6条の直接請求を受けて保険会社がなす給付も、被害者の損害の速やかな回復と同時に加害者(被保険者)の被る損失のてん補を目的とするものであり、その給付内容が被害者の加害者(被保険者)に対する損害賠償額を基準とする点においては保険金の給付と変わるところはないのであるから、上記給付に先立ち、損害賠償額が確定しているか、又は、少なくとも保険会社において損害賠償額が事実上確定したと認めてこれを争わない状態にあることを前提としているものと解するのが相当であり、この点は本件約款6条2項3号に基づく直接請求の場合も異なるものではない。

 本件約款6条2項3号は、保険会社において損害賠償額が事実上確定したと認めてこれを争わない状態があることを前提として被害者救済のために損害賠償請求権者からの直接請求に応じることを定めたものと解すべきである。

 任意保険における直接請求権は、保険会社が行う示談代行につき非弁行為との疑念を払拭するために、保険会社に当事者性を与え、ひいては被害者保護の充実を図ることをも目的として創設されたという経緯を持つもので、任意保険会社に自賠法16条と同様の法的地位を与えることを直接の目的とするものではないのであるし、実際に、被害者に直接請求権を認めた約款の規定上も、自賠法16条の規定ぶりとは異なり、同法にはない支払条件に関する規定等をおき、その支払条件を厳格に定めているのであるから、その制度の沿革や規定ぶりからみても、これが自賠法16条による被害者請求権と異なる枠組みでの運用を予定していることは明らかといえる。

 以上によれば、本件約款6条2項3号は、保険会社が被害者からの請求に任意に応じる場合は別として、被害者が加害者に対する損害賠償額の確定等のための手続を取らないまま、加害者に対する損害賠償請求権を行使しないことを一方的かつ抽象的に宣言することによって、直ちに、保険者に損害賠償額の支払を求める法的手続を取ることを許容するものとはいいがたい。


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