交通事故の死亡事故の損害賠償に関して、「一家の支柱」について取上げます。
交通事故の死亡慰謝料と一家の支柱
死亡慰謝料の金額は、大阪地裁の損害賠償額算定基準では、以下のようになっています。
一家の支柱 | 2,800万円 |
その他 | 2,000万円~2,500万円 |
死亡慰謝料の金額は、被害者が一家の支柱か、それ以外かによって大きく異なります。そのため、被害者が一家の支柱なのか?が問題になることがあります。
一家の支柱とは?
被害者が一家の支柱に当たるか?の問題を解決するには、一家の支柱の定義をはっきりさせる必要があります。
一家の支柱の死亡慰謝料の金額が高額なのは、遺族の生活を維持するためです。つまり、死亡事故の被害者が、扶養義務を負う遺族の生活維持に配慮しているのです。
したがって、一家の支柱とは、被害者が扶養義務を負い、かつ、実際に義務を果たしている親族(一家)を被害者がその世帯の経済的な中心(支柱)であると定義することができます。
被害者の世帯が、主として被害者の収入で生計を維持していれば、一家の支柱に当たります。
世帯
同一世帯でなくても、実際に、被害者が扶養している実態がある親族がいれば、一家の支柱と認められると考えられます。
事実婚や同性婚のような法的に親族関係がない場合は、その生活共同体が形成された経緯、期間、生活実態から上記の一家に相当する法的な扶養義務が認められる程度の関係性が認められれば、一家の支柱又は、それに準じる者として扱われると考えれます。
高齢者の場合
被害者が高齢者の場合でも、上記のような実態があれば、一家の支柱と認められます。
被害者本人の生活費を賄うだけの年金収入しかないような場合は、扶養できる親族の範囲が限られます。そのため、一家の支柱と認められない場合もあります。
以下の裁判例も参照
交通事故の死亡慰謝料に関し、被害者が一家の支柱かどうかが問題になった裁判例
交通事故により被害者が亡くなった場合の慰謝料は、被害者が一家の支柱の場合に最も高くなります。被害者が一家の支柱かどうか?を判断した裁判例を紹介します。
なお、家族の精神的な支柱だったという主張では、一家の支柱と認められません。
夫婦が同程度の収入の場合
昨今、夫婦共働き世帯で、夫婦が同程度の収入があり、夫婦のいずれかが他方を扶養していると言えない世帯も珍しくありません。このような世帯の夫婦のいずれかが、死亡事故の被害者となった場合、一家の支柱と認められるのか?が争いになることがあります。
被害者が一家の支柱かどうか?を認定するのではなく、夫婦それぞれの所得額の比較、家事労働の分担内容、家計への貢献度等をふまえ、慰謝料額の基準を参考に適切な金額を算定することが考えられます。
また、子どものいない夫婦の場合、配偶者が死亡した場合の慰謝料額とするのが相当との裁判官の意見があります。
配偶者と離婚・死別した後、未成年者を養育している片親
配偶者と離婚や死別した後、単身で未成年の子を養育している親が、死亡事故の被害者の場合、被害者が相応の収入を得ていれば、一家の支柱と認められると考えられます。
しかし、低所得者の場合は、一家の支柱と認められないのではないか?という疑問があります。裁判例も事案ごとに様々な慰謝料額を認定していて、一般的な傾向は、固まっていない状況です。