寛骨臼骨折は、骨盤の内、股関節の「受け皿」にあたる部分の骨折です。交通事故などの大きな外力によって発生することが多く、治療後も股関節の痛み、足の上げにくさ、歩きにくさ、可動域制限などが残ることがあります。
寛骨臼は股関節の関節面をつくる部分です。骨癒合しても関節面の不整や軟骨損傷が残ると、将来的に変形性股関節症へ進行したり、人工股関節置換術が必要になったりすることがあります。
交通事故の後遺障害では、股関節の可動域制限、人工骨頭・人工関節の置換、骨盤骨の変形、痛みなどの神経症状が問題になります。この記事では、寛骨臼骨折で残りやすい症状と、後遺障害等級として何級が考えられるのかを解説します。
- 1. 寛骨臼骨折とは?
- 1.1. 交通事故など強い外力で発生する
- 1.2. Judet&Letournel分類
- 1.2.1. 基本骨折の分類
- 1.2.2. 複合骨折
- 1.3. 寛骨臼骨折の治療
- 2. 寛骨臼骨折の主な症状
- 2.1. 変形性股関節症への進行
- 3. 寛骨臼骨折の後遺障害は何級になる?
- 3.1. 股関節の動きが悪くなった場合
- 3.2. 人工骨頭・人工関節を入れた場合
- 3.3. 骨盤骨の変形が残った場合
- 3.4. 脚長差が残った場合
- 3.5. 痛み・しびれが残った場合
- 4. 寛骨臼骨折による後遺障害等級の整理
- 5. 寛骨臼骨折の後遺障害認定で確認したいポイント
- 5.1. レントゲン・CT・MRIなどの画像所見
- 5.2. 股関節の可動域を正確に測定する
- 5.3. 痛みやしびれの一貫性
- 5.4. 後遺障害診断書の記載内容
- 6. 寛骨臼骨折は様々な後遺障害が残る可能性があります
寛骨臼骨折とは?
寛骨臼は、大腿骨骨頭と一緒に股関節を形成しています。寛骨臼と大腿骨骨頭は、お椀とボールに例えられます。お椀である寛骨臼の中をボールの大腿骨骨頭が回転するイメージです。
大腿骨頭をしっかりと覆うことで、股関節の安定性を保ち、歩行時に体重を分散させて軟骨や関節唇へのストレスを軽減する役割があります。
寛骨臼骨折は、股関節の関節内の骨折です。機能的に、予後に関して重大な問題を含んだ骨折です。大腿骨頭が寛骨臼に与える直達外力によって、発生します。

交通事故など強い外力で発生する
交通事故では、膝や大腿部から加わった力が大腿骨頭を通じて寛骨臼に伝わり、寛骨臼骨折が生じることがあります。自動車事故やバイク事故など、大きな外力を受けた事故で発生しやすい骨折です。自動車に乗車中にダッシュボードに膝を打ちつけるダッシュボード外傷によって発生することがあります。
Judet&Letournel分類
寛骨臼骨折を①5つの基本骨折と②基本骨折が2つ以上組合さった5つの複合骨折に分類しています。
基本骨折の分類
以下の5つに、分類されます。
基本骨折の分類
①後壁骨折
②後柱骨折
③前壁骨折
④前柱骨折
⑤横骨折
複合骨折
以下の5つに、分類されます。
複合骨折の分類
①T字骨折
②後柱骨折+後壁骨折
③横骨折+後壁骨折
④前柱又は前壁骨折+後方部分の横骨折
⑤両柱骨折
寛骨臼骨折の治療
直達牽引等の整復を行います。整復が満足いく場合は、そのまま牽引を継続し骨癒合を待ちます。整復が不安定な場合は、鋼線牽引後に観血的内固定術が行われます。
観血的にも整復内固定が不充分で関節面に不整のあるもの、軟骨の損傷が著しい場合、変形性股関節症になることが確実です。股関節固定術、人工股関節置換術が必要になります。
保存的療法・内固定が成功した場合は、治癒まで約1年と言われています。
寛骨臼骨折の主な症状
寛骨臼骨折では、以下のような症状が見られます。
寛骨臼骨折の主な症状
股関節の痛み:歩くと股関節が痛い、階段の昇り降りで痛い、長時間座る・立つのがつらい
歩行困難:歩き方が不自然になる、長時間歩けない、歩行時に杖が必要
股関節の可動域制限:足が上がらない、あぐらがかけない、靴下が履けない
変形性股関節症への進行
寛骨臼骨折は、体重がかかる下肢の関節内の骨折です。わずかな関節面の段差であっても変形性股関節症に進行することがあります。
変形性股関節症に進行すると、股関節の痛み、歩行困難、股関節の可動域制限、下肢の短縮等の症状が現れ、人工股関節置換術が必要になるケースがあります。
寛骨臼骨折の後遺障害は何級になる?
寛骨臼骨折で想定される後遺障害として、以下のような障害があります。
股関節の動きが悪くなった場合
寛骨臼骨折によって股関節の動きが制限された場合、下肢の三大関節の機能障害として等級が問題になります。
股関節の可動域制限の後遺障害等級
股関節がほぼ動かない→関節の用廃:8級7号
健側の2分の1以下に制限→関節の機能に著しい障害:10級11号
健側の4分の3以下に制限→関節の機能に障害:12級7号
人工骨頭・人工関節を入れた場合
寛骨臼骨折に対し人口骨頭、人口関節が施行された場合に想定される後遺障害
置換後に可動域が健側の2分の1以下に制限される→関節の用廃:8級7号
可動域が2分の1以下に制限されない→関節の機能に著しい障害:10級11号
人工骨頭または人工関節を入れた場合は、基本的に10級11号が想定されます。可動域が健側の2分の1以下に制限される場合は8級7号の可能性があります。
骨盤骨の変形が残った場合
寛骨臼骨折によって骨盤が変形した場合、裸体となったとき、変形が明らかにわかる程度であれば12級5号が認定されます。
脚長差が残った場合
寛骨臼骨折の変形治癒などにより、左右の脚の長さに差が出ることがあります。
| 5センチ以上短縮 | 8級5号 |
| 3センチ以上短縮 | 10級8号 |
| 1センチ以上短縮 | 13級8号 |
下肢の短縮の有無は、上前腸骨棘と下腿内果下端間の長さを健側の下肢と比較することによって行います。
痛み・しびれが残った場合
股関節に痛み・しびれが残っている場合は、神経症状として12級13号または14級9号が問題になります。
12級と14級の違いは、他覚所見の有無です。画像所見など他覚所見がある場合は12級、他覚所見がない場合は14級が問題になります。
寛骨臼骨折による後遺障害等級の整理
| 後遺障害の内容 | 後遺障害等級 |
| 人工骨頭・人工関節置換 | 8級7号又は10級11号 |
| 股関節の可動域制限 | 8級7号、10級11号又は12級7号 |
| 脚の短縮 | 8級5号、10級8号又は13級8号 |
| 股関節の痛み・しびれ | 12級13号又は14級9号 |
寛骨臼骨折の後遺障害認定で確認したいポイント
寛骨臼骨折では、上記のように様々な後遺障害が想定されます。後遺障害の認定に際しては、以下のポイントを確認することが重要です。
レントゲン・CT・MRIなどの画像所見
寛骨臼骨折の後遺障害の認定で最も重要なのは、レントゲン・CT・MRIなどの画像所見が存在することです。
通常は、レントゲン検査によって診断が行われますが、関節内骨折のため詳細な骨折型を把握するには、CT検査が有用です。
股関節の可動域を正確に測定する
股関節の可動域制限が残った場合は、可動域角度を正確に測定することが必要です。医療機関によっては、目測で可動域角度を測定することもあるようです。後遺障害の認定に際しては、角度計を用いて正確に測定されていることが重要です。
痛みやしびれの一貫性
交通事故直後から症状固定までの間、継続的に通院し、カルテに症状が記載されていることが重要です。特に、神経症状による後遺障害の認定は、症状の一貫性が重視されます。
後遺障害診断書の記載内容
後遺障害の認定に際して、後遺障害診断書は重要です。後遺障害診断書に記載のない症状は、後遺障害として考慮されません。自覚症状がきちんと後遺障害診断書に記載されているか?を確認する必要があります。
股関節の可動域角度や左右の脚の長さについて、きちんと測定した結果が記載されているか?も確認する必要があります。
寛骨臼骨折は様々な後遺障害が残る可能性があります
寛骨臼骨折は、股関節の「受け皿」にあたる部分の骨折です。後遺障害としては、股関節の痛み、可動域制限、歩行障害、人工股関節置換術の有無などが問題になります。
股関節の可動域制限が残った場合は10級11号や12級7号、人工骨頭・人工関節を挿入置換した場合は8級7号や10級11号、骨盤骨に著しい変形が残った場合は12級5号が問題になります。また、可動域制限として評価されない場合でも、股関節の痛みが神経症状として評価されることがあります。
寛骨臼骨折は、症状固定後の股関節の状態、画像所見、可動域測定、将来的な変形性股関節症や人工関節の可能性などを確認することが大切です。保険会社から示談案が届いている場合や、後遺障害等級に不安がある場合は、示談する前に弁護士に相談することをおすすめします。

無料相談はこちら
お電話またはメールフォームからお申込みください
