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CRPSの後遺障害


交通事故によるCRPSの後遺障害を取上げます。

CRPS(複合性局所疼痛症候群)

 CRPSは複合性局所疼痛症候群ともいい、神経・軟部組織の外傷、骨折の後に、疼痛が回復せずに遷延するものです。神経因性疼痛の代表です。

 原因として考えられるのは、外傷・虚血性心疾患・脊髄疾患・脳損傷・手術などが挙げられます。しかし、明確なものはありません。また、外傷は軽度のことが多いと言われています。

CRPSの分類

 国際疼痛学会の提唱により、2つに分類されます。

CRPSの分類

Type1:神経損傷がなく疼痛と自律神経症状を示す。かつてのRSDに相当するもの。

Type2:神経損傷を伴うもの、かつてのカウザルギーに相当する。

CRPSの主な症状

 様々な症状が出現し、患者によって症状が異なります。以下のような症状が見られます。素人目でも異常な感じがわかるようです。

①疼痛

 原因と考えられる外傷から予想される程度を超えるもので、時間の経過でより強く・広い範囲に症状が現れます。Type2は損傷した神経の支配領域を超える範囲の痛みを伴います。

 通常では見られない激小刺激が疼痛として感じられるアロディニアが見られることがあります。

②皮膚の返還

 発赤、紅潮、チアノーゼ、斑状変化などが見られます。

③腫脹

 浮腫が見られ、しわの消失・光沢化が見られます。

④運動障害

 運動時痛のため筋力低下、可動域制限が見られます。

CRPSの診断

 国際疼痛学会のCRPS判定指標や日本版CRPS判定指標に基づいて行われます。

 日本版CRPS判定指標は①臨床用と②研究用の2つがあります。このうち、①臨床用は、治療を行うために緩い基準になっています。

 したがって、CRPSと診断されても、実際は、CRPSではなかったり、自賠責保険や労災保険の後遺障害として認定されないことがあります。

 そのため、①臨床用の判定指標は、外傷歴のある患者の遷延する症状がCRPSかどうか?を判断する状況で使用すべきでないとされています。また、後遺障害の有無の判定指標ではないとされています。

日本版CRPS判定指標(研究用)

 自覚症状と他覚的所見のそれぞれで、3項目以上該当することが必要とされています。

A:病期のいずれかの時期に,以下の自覚症状のうち3項目以上該当する

 (1)皮膚、爪、毛のいずれかに萎縮性変化

 (2)関節可動域制限

 (3)持続性・不釣り合いな痛み、しびれたような針で刺すような痛み、知覚過敏

 (4)発汗の亢進・低下

 (5)浮腫

B:診察時において、以下の他覚的所見のうち3項目以上該当する

 (1) 皮膚、爪、毛のいずれかに萎縮性変化

 (2)関節可動域制限

 (3)アロディニア、痛覚過敏

 (4) 発汗の亢進・低下

 (5)浮腫

CRPSの後遺障害

 自賠責保険が準拠する労災保険の後遺障害認定基準では,カウザルギーとRSDに分けて後遺障害を認定しています。

①カウザルギーの後遺障害

 疼痛の部位,性状,疼痛発作の頻度,疼痛の強度と持続時間,日内変動,疼痛の原因となる他覚的所見などにより,疼痛の労働能力に及ぼす影響を判断して等級の認定を行う。

カウザルギーの後遺障害

軽易な労務以外の労働に常に差し支える程度の疼痛がある:7級

通常の労務に服することはできるが,疼痛により時には労働に従事することができなくなるため,就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限される:9級

通常の労務に服することはできるが,時には労働に差し支える程度の疼痛が起こるもの:12級

②RSDの後遺障害

 ①関節拘縮,②骨萎縮,③皮膚の変化という慢性期の主要な3つのいずれの症状も健側と比較して明らかに認められる場合に限り,カウザルギーと同様の基準で等級認定されます。


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