交通事故による前十字靭帯(ACL)損傷の後遺障害を取上げます。
前十字靭帯(ACL)損傷
ACLは、前内側線維束・後外側線維束の2つの線維束から構成される靭帯です。大腿骨顆間窩外側後方から脛骨高原前内側に付着します。脛骨前方安定性・下腿内旋・過伸展を制御しています。
ACL損傷には、スポーツで外力が加わった接触型損傷や急激なジャンプ・着地、急な方向転換で膝関節をねじる非接触型があります。
ACL損傷の診断
Lachmanテストで陽性の場合、ACL損傷が疑われます。MRI画像では、ACL自体の断裂を描出できます。
ACL損傷の治療
膝の不安定感を自覚しておらず、跳躍や急な方向転換が必要なスポーツに復帰する希望がなければ、保存的療法が選択されることがあります。
保存的療法が選択された場合でも、靭帯損傷は自然治癒力に乏しく、半月板や軟骨の二次的損傷が生じたり、不安定性が増せば手術の可能性があります。
スポーツへの復帰の希望や日常生活レベルで不安感があれば、靭帯再建手術が行われます。
靭帯再建手術を行うのは、正常な可動域獲得後(受傷後1か月前後以降)です。それまでは、鎮痛投薬治療を行い、歩行・可動域訓練を積極的に行います。手術後は、危険肢位の回避運動を含む運動療法を行います。
ACL損傷の後遺障害
膝関節に、動揺間接が残ることがあります。動揺間接を後遺障害として等級認定されるには、ストレスXPを撮影することが必要になります。
ACL損傷の後遺障害
常時硬性補装具の装着を必要とする程度のもの:準用8級が想定されます。
時々硬性補装具の装着を必要とする程度のもの:準用10級が想定されます。
重激な労働等の際以外は硬性補装具の装着を必要としないもの:準用12級が想定されます。