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後遺障害の認定と消滅時効(交通事故の損害賠償)


交通事故の損害賠償の消滅時効に関して、後遺障害の認定と消滅時効の起算点の関係について判断した最高裁判決を紹介します。

最高裁平成16年12月24日判決

 交通事故の被害者が、症状固定の診断から3年11か月後に加害者に対して損害賠償請求の訴訟を提起した事案です。消滅時効が完成しているのか?が問題になりました。

事案の概要

 被上告人は、平成8年10月14日、上告人の過失によって生じた交通事故により、加療約6か月間を要する右膝蓋骨骨折の傷害を負い、右膝痛等の後遺障害が残ったが、平成9年5月22日に症状固定という診断を受けた。

 被上告人は、本件後遺障害につき、上告人が加入していた共済を通じ、自動車保険料率算定会(現在の損保料率算出機構)に対し、自動車損害賠償保障法施行令別表第2所定の後遺障害等級の事前認定を申請したところ、平成9年6月9日,非該当との認定を受けた。

 被上告人は、平成11年7月30日、自算会の上記事前認定について異議の申立てをしたところ、自算会より、後遺障害等級表12級12号の認定を受けた。被上告人は、これに対し更に異議の申立てをしたが,退けられた。

 被上告人は、平成13年5月2日、上告人に対し、不法行為に基づく損害賠償として、本件後遺障害に基づく逸失利益、慰謝料等及び遅延損害金の支払を求める本件訴訟を提起した。

原審の判断

 原審は、次の通り、消滅時効の完成を認めませんでした。

 被上告人は、後遺障害等級表12級12号の認定を受けるまでは、本件後遺障害に基づく損害賠償請求権を行使することが事実上可能な状況の下にその可能な程度にこれを知っていたということはできないから、被上告人の本件後遺障害に基づく損害賠償請求権の消滅時効の起算点は、上記認定がされた時以降であると解すべきである。

最高裁の判断

 最高裁は、原審の判断を覆し、消滅時効の起算点は、遅くとも症状固定と診断された時と判断しました。

 民法724条にいう「損害及び加害者を知った時」とは、被害者において、加害者に対する賠償請求をすることが事実上可能な状況の下に、それが可能な程度に損害及び加害者を知った時を意味し、同条にいう被害者が損害を知った時とは、被害者が損害の発生を現実に認識した時をいうと解するのが相当である。

 被上告人は、本件後遺障害につき、平成9年5月22日に症状固定という診断を受け、これに基づき後遺障害等級の事前認定を申請したというのであるから、被上告人は、遅くとも上記症状固定の診断を受けた時には、本件後遺障害の存在を現実に認識し、加害者に対する賠償請求をすることが事実上可能な状況の下に、それが可能な程度に損害の発生を知ったものというべきである。自算会による等級認定は、自動車損害賠償責任保険の保険金額を算定することを目的とする損害の査定にすぎず、被害者の加害者に対する損害賠償請求権の行使を何ら制約するものではないから、上記事前認定の結果が非該当であり、その後の異議申立てによって等級認定がされたという事情は、上記の結論を左右するものではない。そうすると、被上告人の本件後遺障害に基づく損害賠償請求権の消滅時効は、遅くとも平成9年5月22日から進行すると解されるから、本件訴訟提起時には、上記損害賠償請求権について3年の消滅時効期間が経過していることが明らかである。


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