交通事故で肩を強く打ち、肩鎖関節脱臼を発症すると、「肩の上の骨が出っ張ったままになっている」「腕を上げると肩が痛い」「以前のように肩を動かせない」といった症状が残ることがあります。
肩鎖関節脱臼で想定される後遺障害は、主に、①鎖骨の変形による12級5号、②肩関節の可動域制限による10級10号・12級6号、③肩の痛みなどによる12級13号・14級9号です。
しかし、肩鎖関節脱臼と診断されたことや、症状が残っていることだけで、後遺障害と認定されるわけではありません。鎖骨の突出が外見上分かる程度に残っているか、可動域制限を生じさせる損傷が画像などで確認できるか、痛みが事故直後から一貫して続いているかなどが重要になります。
この記事では、交通事故による肩鎖関節脱臼で残りやすい症状と、症状ごとに想定される後遺障害等級、認定を受けるために確認しておきたいポイントを解説します。
- 1. 肩鎖関節脱臼とは?
- 1.1. 交通事故では肩を直接打つことで起こりやすい
- 1.2. 肩鎖関節脱臼と肩関節脱臼の違い
- 1.3. 肩鎖関節脱臼の分類と治療
- 2. 肩鎖関節脱臼で残りやすい3つの症状
- 2.1. 鎖骨の突出・肩の変形
- 2.2. 肩を動かしたときの痛み
- 2.3. 腕が上がりにくい・肩が動かしにくい
- 3. 肩鎖関節脱臼の後遺障害は何級?
- 3.1. 鎖骨の変形が残った場合
- 3.2. 肩の可動域制限が残った場合
- 3.3. 肩の痛みが残った場合
- 4. 肩鎖関節脱臼の後遺障害認定で重要なポイント
- 4.1. 肩鎖関節脱臼の後遺障害は変形障害が基本
- 4.2. 鎖骨の突出・左右差を記録しておく
- 4.3. 肩関節の可動域制限の原因を画像で確認する
- 4.4. 事故直後から症状を継続して伝える
- 5. 交通事故で肩鎖関節脱臼による症状が残った方へ
肩鎖関節脱臼とは?
肩鎖関節は、鎖骨と肩峰(肩甲骨)の間にある関節です。鎖骨と肩鎖関節は、体幹から上肢を支える役割を果たしています。
肩峰から上肢にかけての自重に耐えきれず、鎖骨に対して肩峰が下方に転位してしまうことがあります。これが、肩鎖関節脱臼です。

交通事故では肩を直接打つことで起こりやすい
肩鎖関節脱臼は、直接肩から落下したときの直達外力、手や肘をついて転倒したときの介達外力によって生じます。
交通事故では、バイク・自転車の転倒、歩行者が路面に肩から落ちた場合に多く見られます。
肩鎖関節脱臼と肩関節脱臼の違い
肩鎖関節脱臼と肩関節脱臼は、名前がよく似ていますが、外れる関節の位置やケガのメカニズムが異なります。
| 肩鎖関節脱臼 | 肩関節脱臼 | |
| 部位 | 鎖骨と肩甲骨の間の関節 | 上腕骨と肩甲骨の間の関節 |
| 原因 | 肩を強く打ちつけた | 転倒し腕を強くついた 腕を後ろに強く引っ張られた |
| 症状 | 関節の痛み・腫れ | 関節の痛み |

肩関節脱臼の詳細は、以下の記事参照
肩鎖関節脱臼の分類と治療
肩鎖関節脱臼の分類に、Rockwood分類があります。肩鎖関節脱臼をTypeⅠ~Ⅵに、分類します。
| 分類 | 主な損傷 | 治療 |
| TypeⅠ | 肩鎖靱帯の捻挫 | 保存療法 |
| TypeⅡ | 肩鎖靱帯断裂 烏口鎖骨靱帯の部分損傷 | 保存療法 |
| TypeⅢ | 肩鎖靱帯・烏口鎖骨靱帯の断裂 | 保存療法又は手術 |
| TypeⅣ~Ⅵ | 大きな転位や筋損傷を伴う重い脱臼 | 手術療法 |
肩鎖関節脱臼で残りやすい3つの症状
肩鎖関節脱臼により、以下のような症状が残る可能性があります。
鎖骨の突出・肩の変形
肩鎖関節を支える靱帯が断裂すると、鎖骨の外側が上方へずれ、肩の上の骨が出っ張ったように見えることがあります。治療後もこの突出が残り、左右の肩の形が明らかに異なる場合があります。
肩を動かしたときの痛み
腕を上げる、荷物を持つ、シートベルトを着ける、服を着替えるといった動作で、肩の上部に痛みや違和感が生じることがあります。
腕が上がりにくい・肩が動かしにくい
肩鎖関節は、肩関節とは別の関節です。そのため、肩鎖関節脱臼だけ可動域制限が残るとは限りません。ただし、広い範囲の軟部組織損傷や拘縮などを伴う場合には、肩関節の可動域制限が残ることがあります。
肩鎖関節脱臼の後遺障害は何級?
| 残った症状 | 想定される後遺障害等級 |
| 鎖骨の著しい変形 | 12級5号 |
| 肩関節の可動域が健側の2分の1以下 | 10級10号 |
| 肩関節の可動域が健側の4分の3以下 | 12級6号 |
| 医学的に証明できる肩の痛み | 12級13号 |
| 医学的に説明できる肩の痛み | 14級9号 |
①変形障害、②機能障害、③局部の神経症状が考えられます。
鎖骨の変形が残った場合
肩鎖関節部で鎖骨が上方へずれたままとなり、肩の上の突出が外見上分かる程度に残っている場合は、変形障害として12級5号が認定されます。
変形障害が後遺障害として認定されるには、衣服を脱いで裸の状態になったとき、明らかに鎖骨が脱臼していると分かる状態であることが必要です。
肩の可動域制限が残った場合
肩鎖関節脱臼は、肩関節と直接関係のある部位ではありません。したがって、通常、肩鎖関節脱臼により肩関節の可動域が制限されることはありません。
肩鎖関節脱臼のTypeによっては、広範な軟部組織の損傷を伴う場合があります。そのような場合は、肩関節の可動域が制限されることがあります。
肩関節の可動域制限がある場合、健側の2分の1以下に制限されていると10級10号が、健側の4分の3以下に制限されていると12級6号が認定される可能性があります。
なお、可動域の制限があるだけでは、後遺障害として認定されません。可動域制限の原因となった器質的損傷が、画像によって明らかにされていることが必須です。

以下の「関節の機能障害の後遺障害認定のポイント」も参照
関節の機能障害の後遺障害-可動域制限が残った場合の等級と認定のポイント-
交通事故で肩・肘・手首・股関節・膝・足首などの関節が動かしにくくなった場合、可動域制限の程度によって後遺障害等級が問題になります。ただし、角度だけで認定されるわけではなく、骨折・靱帯損傷・神経損傷などの器質的損傷との整合性が重要です。
軟部組織の損傷は、レントゲンでは判明しません。したがって、MRIによって、損傷を明らかにしておく必要があるでしょう。
肩の痛みが残った場合
症状固定後も肩の痛みやしびれが残った場合は、局部の神経症状として12級13号または14級9号が認定される可能性があります。
12級13号では、痛みの原因を客観的な医学的所見によって証明できることが必要です。一方、14級9号では、明確な画像所見がなくても、事故態様、受傷直後からの症状、通院・治療の経過、症状の一貫性などから、痛みが残っていることを医学的に説明できるかが問題になります。
肩鎖関節脱臼の後遺障害認定で重要なポイント
肩鎖関節脱臼の後遺障害は変形障害が基本
肩鎖関節脱臼で見られる後遺障害で最も多いのは、変形障害です。
Rockwood分類でTypeⅢ以上の転位が残っている場合は、裸体になると肩鎖関節脱臼の存在は明らかです。したがって、変形障害として後遺障害認定される可能性が高いです。
TypeⅡ以下の場合は、健側との差がわからず、変形障害として後遺障害と認定されない可能性が高いです。
鎖骨の突出・左右差を記録しておく
肩鎖関節脱臼による変形障害として後遺障害が認定されるには、レントゲンで確認できる程度のものでは不十分です。裸体の状態で肩鎖関節脱臼の存在が明らかになっていることが必要です。
したがって、外形上の変化を写真で撮影して後遺障害診断書に添付する必要があります。
肩関節の可動域制限の原因を画像で確認する
肩鎖関節脱臼が直接の原因で、肩関節の可動域制限が生じることはありません。しかし、肩鎖関節脱臼のTypeによっては、広範な軟部組織の損傷を伴う場合があり、肩関節の可動域制限が生じる場合があります。
可動域制限で後遺障害が認定されるには、可動域制限の原因を証明する必要があります。肩鎖関節脱臼の場合は、MRI検査で肩関節の可動域制限の原因となる軟部組織の損傷を明らかにする必要があります。
事故直後から症状を継続して伝える
肩鎖関節脱臼による痛み・しびれの症状がある場合は、どこが痛むか?どんなときに痛むか?日常生活や仕事で何に困っているか?を事故直後から継続して主治医に伝えておくことが重要です。
交通事故で肩鎖関節脱臼による症状が残った方へ
肩鎖関節脱臼では、治療後も、肩の上の鎖骨が出っ張ったままになる、腕を上げると肩が痛む、肩が以前のように動かせないといった症状が残ることがあります。
想定される後遺障害は、鎖骨の変形による12級5号、肩関節の可動域制限による10級10号・12級6号、肩の痛みなどによる12級13号・14級9号です。鎖骨の変形と可動域制限がそれぞれ後遺障害として評価された場合は、併合によって等級が繰り上がる可能性もあります。
特に肩鎖関節脱臼では、鎖骨の突出・肩の左右差が変形障害として評価される可能性があることを見落とさないことが重要です。一方、可動域制限については、測定された角度だけでなく、その原因となる靱帯や周囲組織の損傷を医学的に説明できることが求められます。
「肩の上の骨が出っ張ったままになっている」「腕を上げると痛い」「治療を続けても肩が動かしにくい」という場合は、示談をする前に、必要な検査が行われているか、後遺障害診断書に症状が適切に記載されているかを確認することが大切です。
肩鎖関節脱臼の後遺障害申請や、保険会社から提示された等級・示談金に疑問がある場合は、交通事故の後遺障害に詳しい弁護士へご相談ください。

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