腱板損傷

 肩腱板は,棘上筋腱,棘下筋腱,小円筋,肩甲下筋腱の4つの腱から構成されています。それらの役割としては,上腕骨の外旋,内旋,外転(側方拳上時)の力源の確保です。

 外旋は棘下筋,小円筋,肩甲下筋によって行われます。棘上筋は肩関節を外転する際60度~120度の可動域の中で上腕骨頭を肩甲窩に圧着させ,上腕挙上時の支点の役割を果たしています。

 腱板損傷で最も多く重大な損傷は棘上筋腱に生じたものです。交通事故では,転倒した際,肩へ直達外力が加わった場合,棘上筋腱の断裂が生じることがあります。他の3つの筋の断裂はあまり例がありません。

腱板損傷の診断

 診断では,肩の自動側方挙上が60度以上不能な場合,棘上筋腱の断裂が疑われます。

 診断の際に,Drop Arm Testが行われます。90度外転が可能であれば棘上筋腱は正常または部分断裂と診断されます。90度外転位を保持し,患側上肢を下へ押下げたときに痛みのため上肢を90度外転位に保持できない場合,陽性とされます。

 X線では特有の所見はありませんが,肩峰骨頭間の距離が5ミリメートル以下の場合,肩峰下面の骨棘,上腕骨頭の棘上筋腱付着部の不整像が見られる場合,棘上筋腱が断裂・劣化している可能性が高いです。

 確定診断は,MRI,関節造影によって行われます。超音波検査が行われることがあります。MRIでは,T2強調画像で断裂部は高信号を示します。

腱板損傷の治療

 腱板の不全損傷の場合は,保存療法が行われます。局所の安静,投薬治療が主,疼痛が強い場合,局所麻酔で自然治癒することがほとんどです。

 棘上筋腱の完全断裂の場合は,観血的療法が行われます。観血的療法が行われた場合,治療の終了まで6か月~1年程度の期間を要します。

腱板損傷の後遺障害

 腱板損傷の後遺障害としては,肩関節の機能障害と腱板損傷による疼痛(局部の神経症状)が考えられます。

肩関節の機能障害

 肩関節の可動域が健側の2分の1以下に制限された場合,関節の著しい機能障害として10級10号が認定されます。健側の4分の3以下に制限された場合は関節の機能障害として12級6号が認定されます。

局部の神経症状

 疼痛が残った場合は,局部の神経症状として評価されます。画像所見がある場合は12級13号,画像所見がない場合は14級9号が想定されます。