腱板損傷の後遺障害(交通事故の後遺障害)

腱板損傷

 肩腱板は,前方から肩甲下筋腱,棘上筋,棘下筋,小円筋の4つの腱から構成されています。これらの腱が一体化して上腕骨頭をおおっています。

 肩関節の運動時,つまり,肩の外転,外旋,内旋を行う際に三角筋,大胸筋などの表層にあるアウターマッスルがそれぞれの動作の主作動筋になります。腱板は,上腕骨頭と肩甲骨関節窩の安定性を保つインナーマッスルとして作用します。

 腱板損傷の原因は,大きく2つに分けられます。1つ目は交通事故などの外傷です。転落,落下などの1回の大きな外傷の場合と小さな外傷が繰り返される場合があります。2つ目は,加齢による変性です。生体力学的に変性した腱板の強度は低下し,変性が進行するため,腱板の断裂に至ります。

 腱板損傷・断裂が生じた場合,自然治癒することはなく,経過とともに,断裂部は拡大し,筋萎縮も進行します。自覚症状としては,安静時痛,夜間痛,運動時痛,筋力低下が見られます。

腱板損傷の診断

 診断では,肩の自動側方挙上が60度以上不能な場合,棘上筋腱の断裂が疑われます。

 診断の際に,Drop Arm Testが行われます。90度外転が可能であれば棘上筋腱は正常または部分断裂と診断されます。90度外転位を保持し,患側上肢を下へ押下げたときに痛みのため上肢を90度外転位に保持できない場合,陽性とされます。

 X線では特有の所見はありませんが,肩峰骨頭間の距離が5ミリメートル以下の場合,肩峰下面の骨棘,上腕骨頭の棘上筋腱付着部の不整像が見られる場合,棘上筋腱が断裂・劣化している可能性が高いです。

 確定診断は,MRI,関節造影によって行われます。超音波検査が行われることがあります。MRIでは,T2強調画像で断裂部は高信号を示します。

腱板損傷の治療

 腱板損傷の治療は,まず保存的治療が行われます。安静,日常生活指導とともに,投薬・注射により炎症と疼痛の軽減を図ります。疼痛が軽減すると,リハビリを行います。

 症状が継続する場合,日常生活に支障が生じる場合は,手術適応となります。手術適応の場合,間接鏡下肩腱板断裂手術が行われています。

腱板損傷の後遺障害

 腱板損傷の後遺障害としては,肩関節の機能障害と腱板損傷による疼痛(局部の神経症状)が考えられます。

肩関節の機能障害

 肩関節の可動域が健側の2分の1以下に制限された場合,関節の著しい機能障害として10級10号が認定されます。健側の4分の3以下に制限された場合は関節の機能障害として12級6号が認定されます。

局部の神経症状

 疼痛が残った場合は,局部の神経症状として評価されます。画像所見がある場合は12級13号,画像所見がない場合は14級9号が想定されます。