交通事故で骨折や神経損傷をした後、治療を続けても強い痛みが残ることがあります。痛みだけでなく、腫れ、皮膚の色の変化、発汗の異常、関節の動かしにくさなどが続く場合、CRPSと診断されることがあります。
CRPSは、症状のつらさが大きい一方で、後遺障害として認定されるかどうかは、診断名だけでは決まりません。痛みの程度、症状の経過、他覚的所見、RSD・カウザルギーのどちらに当たるのかなどが問題になります。
このページでは、交通事故後のCRPSで残りやすい症状、後遺障害として認定される可能性のある等級、認定で問題になりやすいポイントを解説します。
- 1. CRPS(複合性局所疼痛症候群)とは?
- 1.1. CRPSの分類
- 2. CRPSで残りやすい症状
- 2.1. ①強い痛み・アロディニア
- 2.2. ②皮膚の色の変化・発汗異常
- 2.3. ③腫れ・むくみ
- 2.4. ④関節の動かしにくさ・筋力低下
- 3. CRPSの診断
- 3.1. 日本版CRPS判定指標(研究用)
- 3.1.1. A:病期のいずれかの時期に、以下の自覚症状のうち3項目以上該当する
- 3.1.2. B:診察時において、以下の他覚的所見のうち3項目以上該当する
- 4. CRPSの後遺障害は何級になる?
- 4.1. ①カウザルギーの後遺障害
- 4.2. ②RSDの後遺障害
- 4.2.1. RSDの慢性期の主要な症状
- 5. CRPSと診断されても後遺障害と認定されるとは限らない
- 5.1. 自覚症状のみではなく他覚的所見が重要
- 5.2. 症状の経過を医療記録に残すことが重要
- 6. CRPSの後遺障害認定で注意したいポイント
- 6.1. 痛みの程度・頻度・持続時間を具体的に伝える
- 6.2. 他覚所見が必要
- 7. CRPSの後遺障害のまとめ
CRPS(複合性局所疼痛症候群)とは?
CRPSは複合性局所疼痛症候群ともいい、神経・軟部組織の外傷、骨折の後に、疼痛が回復せずに遷延するものです。神経因性疼痛の代表です。つまり、ケガ・手術の後にケガの程度からは考えられないような激しい痛み・腫れが続く慢性的な疾患です。
原因として考えられるのは、外傷・虚血性心疾患・脊髄疾患・脳損傷・手術などです。しかし、明確なものはありません。また、外傷は軽度のことが多いと言われています。
CRPSの分類
国際疼痛学会の提唱により、2つに分類されます。
CRPSの分類
Type1:神経損傷がなく疼痛と自律神経症状を示す。かつてのRSDに相当するもの。
Type2:神経損傷を伴うもの、かつてのカウザルギーに相当する。
CRPSで残りやすい症状
CRPSは、様々な症状が出現し、患者によって症状が異なります。以下のような症状が見られます。素人目でも異常な感じがわかるようです。
①強い痛み・アロディニア
原因と考えられる外傷から予想される程度を超えるもので、時間の経過でより強く・広い範囲に症状が現れます。Type2は、損傷した神経の支配領域を超える範囲の痛みを伴います。
通常では見られない激小刺激が疼痛として感じられるアロディニアが見られることがあります。
②皮膚の色の変化・発汗異常
発赤、紅潮、チアノーゼ、斑状変化などが見られます。
③腫れ・むくみ
浮腫が見られ、しわの消失・光沢化が見られます。
④関節の動かしにくさ・筋力低下
運動時痛のため筋力低下、可動域制限が見られます。
CRPSの診断
国際疼痛学会のCRPS判定指標や日本版CRPS判定指標に基づいて行われます。
日本版CRPS判定指標は①臨床用と②研究用の2つがあります。このうち、①臨床用は、治療を行うために緩い基準になっています。
したがって、CRPSと診断されても、実際はCRPSではなかったり、自賠責保険や労災保険の後遺障害として認定されないことがあります。
そのため、①臨床用の判定指標は、外傷歴のある患者の遷延する症状がCRPSかどうか?を判断する状況で使用すべきでないとされています。また、後遺障害の有無の判定指標ではないとされています。
日本版CRPS判定指標(研究用)
自覚症状と他覚的所見のそれぞれで、3項目以上該当することが必要とされています。
A:病期のいずれかの時期に、以下の自覚症状のうち3項目以上該当する
- 皮膚、爪、毛のいずれかに萎縮性変化
- 関節可動域制限
- 持続性・不釣り合いな痛み、しびれたような針で刺すような痛み、知覚過敏
- 発汗の亢進・低下
- 浮腫
B:診察時において、以下の他覚的所見のうち3項目以上該当する
- 皮膚、爪、毛のいずれかに萎縮性変化
- 関節可動域制限
- アロディニア、痛覚過敏
- 発汗の亢進・低下
- 浮腫
CRPSの後遺障害は何級になる?
自賠責保険が準拠する労災保険の後遺障害認定基準では、カウザルギーとRSDに分けて後遺障害を認定しています。
①カウザルギーの後遺障害
疼痛の部位、性状、疼痛発作の頻度、疼痛の強度と持続時間、日内変動、疼痛の原因となる他覚的所見などにより、疼痛の労働能力に及ぼす影響を判断して等級の認定を行うとされています。
カウザルギーの後遺障害
軽易な労務以外の労働に常に差し支える程度の疼痛がある:7級
通常の労務に服することはできるが、疼痛により時には労働に従事することができなくなるため、就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限される:9級
通常の労務に服することはできるが、時には労働に差し支える程度の疼痛が起こるもの:12級
②RSDの後遺障害
以下の慢性期の主要な3つの症状全てが、健側と比較して明らかに認められる場合に限り、カウザルギーと同様の基準で等級認定されます。
RSDの慢性期の主要な症状
①関節拘縮
②骨萎縮
③皮膚の変化
このように、「CRPSと診断された」だけでは足りず、RSDでは3つの症状が明らかに認められるかが問題になります。
CRPSと診断されても後遺障害と認定されるとは限らない
前述のとおり、CRPSと診断されても、実際はCRPSではなかったり、自賠責保険・労災の後遺障害と認められないことがあります。
自覚症状のみではなく他覚的所見が重要
RSDの場合、後遺障害として認定されるには、健側と比べて①関節拘縮、②骨委縮、③皮膚の変化の3つの症状が他覚的に認められる必要があります。
関節の可動域の測定結果、レントゲンなどで骨委縮が確認できる、サーモグラフィーなどで皮膚の温度差・色調変化が確認できることが必要になります。
症状の経過を医療記録に残すことが重要
治療期間中に症状の訴えが途切れていたり、日によって痛む部位や程度が異なっていると、症状に一貫性がないと判断されます。症状に一貫性がないと、後遺障害として認められません。
「いつから痛みが強くなったか」「腫れや皮膚変化がいつ確認されたか」「左右差があるか」「治療内容」などを医療記録に残るようにすることが重要になります。
CRPSの後遺障害認定で注意したいポイント
痛みの程度・頻度・持続時間を具体的に伝える
CRPSの後遺障害の認定では、疼痛の部位・性状・頻度・強度・持続時間などが問題になります。そのため、症状を具体的に医師に伝え医療記録に残すことが重要です。症状の一貫性を示すことにもつながります。
他覚所見が必要
カウザルギーは神経損傷の原因が他覚所見で明らかになっていることが必要です。RSDは、①関節拘縮、②骨委縮、③皮膚の変化の3つの症状が他覚所見で確認できることが必要です。
CRPSの後遺障害のまとめ
CRPSは、交通事故による骨折や神経損傷などの後に、強い痛み、腫れ、皮膚の変化、関節の動かしにくさなどが残ることがある症状です。
後遺障害としては、カウザルギーまたはRSDとして、症状の程度に応じて7級・9級・12級に認定される可能性があります。
ただし、CRPSと診断されたからといって、当然に後遺障害が認定されるわけではありません。痛みの程度だけでなく、関節拘縮、骨萎縮、皮膚の変化、腫れ、発汗異常、可動域制限などの他覚的所見が重要になります。
交通事故後に強い痛みや皮膚の変化が続いている場合は、症状の経過や検査結果を整理したうえで、後遺障害申請を進めることが大切です。CRPSの後遺障害認定に不安がある場合は、交通事故の後遺障害に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。
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