交通事故による後遺障害の内、関節の機能障害を取上げます。
関節の機能障害
関節の機能障害は、①関節の用廃、②関節の著しい機能障害、③関節の機能障害の3つで評価されます。上肢も下肢も、同じ基準で評価します。以下、それぞれについて、概略を説明します。
関節の用廃
次のいずれかに該当する場合、関節の用廃と評価します。
(1)関節の完全強直またはこれに近い状態にあるもの
「近い状態」とは、関節の可動域が健側の可動域角度の10%程度以下に制限されているものとされています。また、10%程度とは、健側の可動域角度の10%に相当する角度を5度単位で切り上げた角度とされています。
(2)関節の完全弛緩性麻痺またはこれに近い状態にあるもの
「近い状態」とは、自動運動では関節の可動域が健側の可動域角度の10%以下となったものとされています。
(3)人工関節・人口骨頭置換術を行い、可動域が2分の1以下に制限されている
主要運動が複数ある関節は、主要運動のいずれか一方の可動域が2分の1以下に制限されていれば、用廃と評価されます。
なお、主要運動が複数ある肩関節と股関節は、いずれの主要運動も全く可動しない又はこれに近い状態になった場合に用廃と評価されます。
関節の著しい機能障害
次のいずれかに該当する場合、関節の機能に著しい障害を残すと評価されます。
関節の著しい機能障害
(1)関節の可動域が2分の1以下に制限されている
(2)人工関節・人口骨頭置換術を行い、可動域が2分の1以下に制限されていない
関節の機能障害
関節の可動域が4分の3以下に制限されている場合は、関節の機能に障害を残すものと評価されます。
関節の機能障害の評価方法及び関節可動域の測定要領
労災保険では、関節の機能障害の後遺障害の認定に当たっては、関節の機能障害の評価方法及び関節可動域の測定要領に従って、認定されます。交通事故の後遺障害も労災の認定基準に準拠しているので、参考になります。
可動域の比較対象
健側と患側の可動域を比較します。健側とは交通事故でけがをしていない方、患側は交通事故でけがをした方のことです。交通事故前から健側に可動域制限をある場合は、参考可動域角度と比較します。
測定角度の単位
関節の可動域を測定する際の測定角度は5度単位です。当然、角時計によって測定します。
他動運動の測定値で評価
関節の機能障害は,原則として,他動運動による測定値で評価します。他動運動とは,医師などの第三者の介助によって動かす運動のことです。
対象となる関節運動
部位 | 主要運動 | 参考運動 |
脊柱(頸部) | 屈曲・伸展,回旋 | 側屈 |
脊柱(胸腰部) | 屈曲・伸展 | 回旋,側屈 |
肩関節 | 屈曲,外転・内転 | 伸展,外旋,内旋 |
ひじ関節 | 屈曲・伸展 | |
手関節 | 屈曲・伸展 | 橈屈・尺屈 |
前腕 | 回内・回外 | |
股関節 | 屈曲・伸展,外転・内転 | 外旋・内旋 |
ひざ関節 | 屈曲・伸展 | |
足関節 | 屈曲・伸展 | |
母指 | 屈曲・伸展,橈側外転,掌側外転 | |
手指・足指 | 屈曲・伸展 |
関節には主要運動と参考運動があります。主要運動は各関節の日常動作における最も重要なものをいいます。原則として,関節の機能障害は,主要運動の可動域制限によって評価します。
屈曲と伸展のように同一面にある運動は,両者の可動域角度を合計した数値で可動域制限の程度を評価します。