交通事故による大腿骨骨幹部骨折・大腿骨転子下骨折の後遺障害を取上げます。
大腿骨骨幹部骨折・大腿骨転子下骨折
大腿骨転子下骨折は、非常に強い力が加わらなければ、この部位の骨折は生じません。交通事故や転落などの高エネルギー外傷により生じることが多い骨折です。高齢者には少ないという特徴があります。
大腿骨骨幹部骨折は、直達外力による場合が多い骨折です。高エネルギー外傷であることが多いのが特徴です。
大腿骨転子下骨折の分類
Seinsheimer分類が使われています。もともとは、5つに分類していましたが、後に、Kyle TypeⅢが追加されました。
TypeⅠ
転位のない骨折です。骨片の転位が2ミリメートル以下のものが該当します。
TypeⅡ
2-Part骨折(二分割骨折)です。さらに次のように分類されます。
TypeⅡの分類
A:横骨折
B:螺旋骨折で小転子が近位骨片にある
C:螺旋骨折で小転子が遠位骨片にある
TypeⅢ
3-Part骨折(三分割骨折)で、さらに次のように分類されます。
TypeⅢの分類
A:螺旋骨折で小転子が第3骨片であるもの
B:螺旋骨折で外側に第3骨片であるもの
TypeⅣ
粉砕骨折で、4骨片又はそれ以上のものです。
TypeⅤ
転子下-転子間骨折、骨折線が大転子を通っているものです。
Kyle TypeⅢ
内反変形を伴う転子間骨折、後内側骨皮質部分と大転子部分に骨折を伴うものです。
大腿骨骨幹部骨折の分類
AO/ASIF分類によって分類します。2つの主骨片の接触状況と骨折部の形態による分類です。
Type A
単純骨折、近位骨片と遠位骨片が90%以上接触のものです。
Type Aの分類
A1:螺旋骨折
A2:斜骨折
A3:横骨折
Type B
楔状骨折、骨折部は部分的に接触があるのみです。
Type Bの分類
B1:螺旋楔状骨折
B2:屈曲楔状骨折
B3:多骨片楔状骨折
Type C
粉砕骨折、1つ又はそれ以上の中間骨片を有し接触がないものです。
Type Cの分類
C1:螺旋骨折
C2:分節
C3:不規則
大腿骨転子下骨折・骨幹部骨折の治療
保存的療法で骨癒合が得られる荷重を開始するのに3~4か月要するので、基本的には手術対応となります。
内固定治療
内固定は、回旋変形、脚短縮を避けるため、髄内釘・横止めスクリュー、プレート・スクリューによります。骨癒合の進行が遅く回旋変形が生じないと判断された場合、固定術後2か月程度をめどにスクリューの抜釘が行われることがあります。
創外固定治療
重度の粉砕骨折のように、プレート、キンチャーでまとめることが困難な場合に施行されます。
大腿骨骨幹部骨折・転子下骨折の後遺障害
骨幹部等に癒合不全を残し、常に硬性補装具が要するものは、偽関節を残し、著しい運動障害を残すものとして7級10号が想定されます。
骨幹部等に癒合不全を残し、常に硬性補装具を必要とするもの以外は、偽関節を残すものとして8級9号が想定されます。
長管骨に変形を残すものは12級8号が想定されます。後遺障害として認定されるには、外部から想見できる程度のものをいうので、15度以上屈曲して不正癒合していることが必要です。