交通事故で大腿骨骨幹部骨折や大腿骨転子下骨折を負った場合、手術やリハビリによって骨折が治っても、太ももの痛みや股関節・膝関節の動かしにくさなどの症状が残ることがあります。
また、骨折した大腿骨が短くなったり、変形した状態で骨がくっついたりすることもあります。
このような症状や障害が残った場合には、後遺障害等級の認定を受けられる可能性があります。
大腿骨骨幹部骨折・大腿骨転子下骨折では、骨折した部分の状態だけでなく、関節の可動域制限、下肢の短縮、痛みなど、どのような障害が残っているかを確認することが重要です。
この記事では、大腿骨骨幹部骨折・大腿骨転子下骨折で残りやすい症状、考えられる後遺障害等級、後遺障害認定のポイントを解説します。
- 1. 大腿骨骨幹部骨折・大腿骨転子下骨折とは?
- 1.1. 大腿骨骨幹部骨折とは?
- 1.2. 大腿骨転子下骨折とは?
- 1.3. 大腿骨転子下骨折・骨幹部骨折の治療
- 2. 大腿骨骨幹部骨折・転子下骨折で残りやすい症状
- 2.1. 太もも・股関節の痛み・しびれ
- 2.2. 股関節・膝関節の可動域制限
- 2.3. 脚の短縮(左右の脚の長さの違い)
- 2.4. 骨の変形・偽関節
- 3. 大腿骨骨幹部骨折・転子下骨折の後遺障害は何級?
- 3.1. 偽関節が残った場合:7級10号・8級9号
- 3.2. 大腿骨の変形が残った場合:12級8号
- 3.3. 股関節・膝関節の可動域制限が残った場合:8級7号・10級11号・12級7号
- 3.4. 脚が短くなった場合:8級5号・10級8号・13級8号
- 3.5. 痛み・しびれが残った場合:12級13号・14級9号
- 4. 大腿骨骨幹部骨折・転子下骨折の後遺障害認定のポイント
- 4.1. レントゲン・CTなどの画像検査
- 4.2. 関節の可動域・脚の長さの測定
- 4.3. 症状を継続的に医師に伝える
- 5. 交通事故による大腿骨骨幹部骨折・転子下骨折の後遺障害でお悩みの方へ
大腿骨骨幹部骨折・大腿骨転子下骨折とは?
大腿骨は、股関節から膝関節までをつなぐ、人体で最も長い骨です。大腿骨骨幹部骨折と大腿骨転子下骨折は、いずれも大腿骨に生じる骨折です。骨折する部位によって、治療法や後遺症が残る可能性が変わります。

大腿骨骨幹部骨折とは?
大腿骨骨幹部骨折は、大腿骨の中央部分にある、細長い骨幹部に生じる骨折です。
交通事故や高所からの転落など、大腿骨に強い力が加わることによって生じることが多い骨折です。
骨折の状態によって、横骨折、斜骨折、螺旋骨折、粉砕骨折などに分けられます。
骨折した部分が大きくずれたり、複数の骨片に分かれたりすると、骨が変形した状態でくっつくことや、骨の長さが短くなることがあります。
大腿骨転子下骨折とは?
大腿骨転子下骨折は、股関節に近い大腿骨の上部にある、小転子のすぐ下で生じる骨折です。一般に、小転子の下方約5cmまでの範囲に生じる骨折をいいます。
交通事故などによる強い外力のほか、骨粗鬆症のある高齢者の転倒などによっても生じます。
この部分には強い筋肉が付着しているため、骨折すると筋肉に引っ張られて骨片がずれやすく、変形や短縮を生じることがあります。
大腿骨転子下骨折・骨幹部骨折の治療
骨折の状態や全身状態に応じて治療方法が選択されます。手術によって骨折した部分を固定することが一般的です。
代表的な手術方法には、髄内釘やプレート・スクリューを使って骨折部分を固定する方法があります。手術後は、骨の癒合状態を確認しながら、歩行訓練や関節の可動域訓練などのリハビリを行います。
治療を続けても骨が十分にくっつかない場合や、骨が変形した状態でくっつく場合があります。また、骨折が治った後も痛みや関節の可動域制限などが残ることがあります。
大腿骨骨幹部骨折・転子下骨折で残りやすい症状
大腿骨骨幹部骨折・転子下骨折では、骨折した場所や骨折の程度、治療経過によって、以下のような症状が残ることがあります。
太もも・股関節の痛み・しびれ
骨折した部分の骨癒合が得られても、太ももや股関節、膝周辺の痛みが残ることがあります。
たとえば、歩くと太ももが痛む、長時間立っていると痛みが強くなる、階段の上り下りで痛みが出るといった症状です。
骨折による骨や周囲の軟部組織の損傷、手術で使用した固定材料の影響などが痛みの原因となる場合があります。
神経損傷を合併することは稀ですが、神経損傷を伴っている場合には、しびれや感覚の異常が残ることもあります。
股関節・膝関節の可動域制限
大腿骨骨幹部骨折・転子下骨折では、股関節や膝関節の動きが制限されることがあります。
骨折による筋肉や軟部組織の損傷、長期間の固定、骨の変形などが原因となる場合があります。その結果、股関節を曲げにくい、膝を十分に曲げられない、しゃがむことが難しいといった症状が残ることがあります。
脚の短縮(左右の脚の長さの違い)
骨折した骨が短くなった状態でくっつくと、左右の脚の長さに差が生じることがあります。脚の長さが違うと、歩行時に身体が傾いたり、左右の脚のバランスが悪くなったりすることがあります。
骨の変形・偽関節
骨折した大腿骨が、本来の形とは異なる状態でくっつくことがあります。これを変形癒合といいます。
たとえば、大腿骨が曲がった状態や、ねじれた状態でくっつく場合があります。また、骨折した部分が十分にくっつかず、癒合不全が残ることもあります。
大腿骨骨幹部骨折・転子下骨折の後遺障害は何級?
交通事故による大腿骨骨幹部骨折・転子下骨折の後遺障害としては、偽関節、変形障害、関節の機能障害、短縮障害、局部の神経症状が想定されます。
| 後遺障害の内容 | 後遺障害等級 |
| 偽関節 | 7級10号又は8級9号 |
| 大腿骨の著しい変形や骨端部のゆ合不全 | 12級8号 |
| 股関節・膝関節の可動域制限 | 8級7号、10級11号又は12級7号 |
| 脚の短縮 | 8級5号、10級8号又は13級8号 |
| 股関節・太ももの痛み・しびれ | 12級13号又は14級9号 |
偽関節が残った場合:7級10号・8級9号
骨折した大腿骨が十分にくっつかず、骨幹部などに癒合不全が残った場合には、偽関節として後遺障害が認定される可能性があります。
骨幹部等に癒合不全を残し、常に硬性補装具が要するものは、偽関節を残し、著しい運動障害を残すものとして7級10号が想定されます。
骨幹部等に癒合不全を残し、常に硬性補装具を必要とするもの以外は、偽関節を残すものとして8級9号が想定されます。
大腿骨の変形が残った場合:12級8号
以下のように、骨折した大腿骨が変形した状態で癒合した場合には、12級8号の「長管骨に変形を残すもの」に該当する可能性があります。
- 大腿骨が15度以上屈曲して不正癒合し、外部から見て分かる程度の変形が残っている場合
- 大腿骨の骨端部を除く部分の直径が、3分の2以下に減少した場合
- 大腿骨が外旋45度以上、または内旋30度以上回旋変形して癒合し、所定の検査条件を満たす場合
大腿骨の変形は、CT画像よって判断します。
股関節・膝関節の可動域制限が残った場合:8級7号・10級11号・12級7号
股関節や膝関節の動きが制限されている場合には、関節の機能障害として後遺障害が認定される可能性があります。
関節が強直するなど、関節の用を廃したと評価される場合、8級7号が認定される可能性があります。
関節の可動域が骨折していない側の2分の1以下に制限されている場合、10級11号が認定される可能性があります。
関節の可動域が骨折していない側の4分の3以下に制限されている場合、12級7号が認定される可能性があります。
可動域が制限されているだけでは後遺障害として認定されません。可動域制限の原因が交通事故による骨折などと医学的に関連していることが必要です。
脚が短くなった場合:8級5号・10級8号・13級8号
大腿骨が短くなった状態で癒合し、左右の脚の長さに差が生じた場合には、短縮障害として後遺障害が認定される可能性があります。
| 5センチ以上短縮 | 8級5号 |
| 3センチ以上短縮 | 10級8号 |
| 1センチ以上短縮 | 13級8号 |
下肢の短縮の有無は、上前腸骨棘と下腿内果下端間の長さを健側の下肢と比較することによって行います。
痛み・しびれが残った場合:12級13号・14級9号
骨折した部分に痛みやしびれが残った場合には、局部の神経症状として後遺障害等級が認定される可能性があります。
12級13号は、画像所見や診察所見などによって、残存する症状を医学的・他覚的に証明できることが重要です。
症状を他覚的に証明することはできなくても、受傷状況や治療経過、症状の一貫性などから、交通事故による症状が医学的に説明できる場合、14級9号が認定される可能性があります。
痛みが残っているというだけで、必ず後遺障害が認められるわけではありません。症状と骨折との関係を医学的に説明できることが重要です。
大腿骨骨幹部骨折・転子下骨折の後遺障害認定のポイント
交通事故による大腿骨骨幹部骨折・転子下骨折で、後遺障害の認定を受けるには、以下のようなポイントを押さえておくことが重要です。
レントゲン・CTなどの画像検査
大腿骨の変形や骨癒合の状態を確認するためには、レントゲンやCTなどの画像検査が重要になります。
特に、骨の変形や偽関節が問題となる場合には、骨折部分がどのような状態で癒合しているか、あるいは癒合不全が残っているかを客観的に確認する必要があります。レントゲンでは画像所見が分かりにくく、CTの方が適しています。
関節の可動域・脚の長さの測定
股関節や膝関節の可動域制限が残った場合には、関節の可動域を正確に測定することが重要です。
脚の短縮が疑われる場合には、左右の下肢の長さを適切に測定し、差を明らかにする必要があります。
症状を継続的に医師に伝える
骨折後の痛みやしびれが残っている場合には、その症状を継続的に医師に伝えることが重要です。
単に痛みを訴えるだけではなく、たとえば、太ももが痛むので歩行が辛い、長時間立つことが難しい、膝を曲げると痛みが出るなど、日常生活や仕事にどのような支障が生じているかも伝えるといいでしょう。
症状固定時の後遺障害診断書だけでなく、それまでの診療録に記録された症状や治療経過も、後遺障害認定の判断材料になります。
交通事故による大腿骨骨幹部骨折・転子下骨折の後遺障害でお悩みの方へ
大腿骨骨幹部骨折・大腿骨転子下骨折では、骨折が治った後も、太ももの痛みやしびれ、股関節・膝関節の可動域制限、脚の短縮、骨の変形などが残ることがあります。
このような症状や障害が残った場合には、その内容や程度に応じて後遺障害等級が認定される可能性があります。
後遺障害の認定を受けるためには、骨折の状態を画像検査で確認することに加えて、関節の可動域や脚の長さなどを適切に測定し、残っている障害を明らかにすることが重要です。
交通事故による大腿骨骨幹部骨折・転子下骨折で後遺症が残っている場合には、後遺障害等級の認定について検討する必要があります。

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