運行供用者責任に関する最高裁判決を紹介します。
最高裁平成9年11月27日判決
2時間の約束で自動車を借りた者が自動車を返還せず、1か月後に起こした事案です。
自動車の貸主が、運行供用者責任を負うか?が争われました。
事案の概要
本件自動車の所有者である被上告人は、平成3年12月10日、友人であるAに対して、2時間後に返還するとの約束の下に本件自動車を無償で貸し渡したところ、Aは、その約束に反して本件自動車を返還せず、約1か月間にわたってその使用を継続し、平成4年1月11日、本件自動車を運転中に本件事故を起こした。
Aは、本件自動車を長期間乗り回す意図の下に、2時間後に確実に返還するかのように装って被上告人を欺き、本件自動車を借り受けたものであり、返還期限を経過した後は、度々被上告人に電話をして、返還の意思もないのにその場しのぎの約束をして返還を引き延ばしていた。被上告人は、Aから電話連絡を受けた都度、本件自動車を直ちに返還するよう求めており、同人による使用の継続を許諾したものではなかったが、自ら直接本件自動車を取り戻す方法はなく、同人による任意の返還に期待せざるを得なかった。
最高裁の判断
本件事故当時の本件自動車の運行は専らAが支配しており、被上告人は何らその運行を指示、制御し得る立場になく、その運行利益も被上告人に帰属していたとはいえないことが明らかであるから、被上告人は、自動車損害賠償保障法3条にいう運行供用者に当たらないと解するのが相当である。