名義貸しと運行供用者責任との関係を判断した最高裁判決を紹介します。
最高裁昭和44年9月18日判決
Aが、自動車運送事業の免許を受けないで、自動車の使用者名義をXとし、車体にXの商号を表示した自動車を使用して、専属的にXのための貨物運送に当たっていた事案です。
Aの従業員が起こした交通事故について、Xが運行供用者責任を負うのか?が問題になりました。
事案の概要
Aは、もと上告会社に自動車運転手として勤務していたもので、上告会社を退職したのちも、自動車運送事業を経営するために必要な運輸大臣の免許は受けないまま、退職時に上告会社から代金は月賦払の約定で譲り受けた自動車やその後に買い換えた自動車を使用して、専属的に上告会社の製材原木や製品の運送に従事していた。
本件加害自動車も、上記の用に供するために買い換えてAにより使用保管されていたもので、購入先に対しては割賦代金の支払のために上告会社振出の約束手形が差し入れられ、上告会社は、各期日に右手形金を支払ったほか、運行に要するガソリン代や自動車修理代等も支払い,これらに相当する金額を上告会社からAに支払う運賃から差し引いていたこと、本件事故時においては、残債務があつて加害自動車の所有権はなおBに留保されていたが、自動車登録原簿には使用の本拠の位置として上告会社の所在地が、また自動車検査証には使用者として上告会社が記載され、車体にも上告会社の商号が表示されていたこと、そして、本件事故は、Aの被用者であるCが右自動車を運転して上告会社のパルプ材を運搬したのち上告会社へ帰る途中で起こした。
最高裁の判断
最高裁は、名義を貸した形になっている上告会社の責任を肯定した原審の判断を是認しました。
上記の事実関係のもとにおいては、上告会社をもって、本件加害自動車の運行について事実上の支配力を有し、かつ、その運行による利益を享受していたものと認めて、自動車損害賠償保障法3条にいう「自己のために自動車を運行の用に供する者」にあたると解し、本件事故による損害につき、同条による上告会社の賠償責任を肯定した原審の判断は、正当として是認することができる。