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運行供用者の免責の主張を認めなかった最高裁判決(交通事故の判例)


運行供用者の運行供用責任が免責されるか?を判断した最高裁判決を紹介します。

最高裁昭和46年11月19日判決

 警察車両が自動車専用道路において転回行為を行った事案です。運行供用責任の免責が認められるか?が問題となりました(要件については、運行供用責任の免責参照)。

事案の概要

 昭和40年10月19日午前3時10分、自動車専用道路である通称京葉有料道路の厚木インターチェンジから千葉方面へ900メートルの下り線において発生した。本件道路の最高制限速度は高速車が時速70キロメートル、中速車が時速60キロメートル、低速者が時速50キロメールと指定されていたが、当時は通行量がまばらで、通行車両はいずれも時速8、90キロメートルの高速で走行していた。

 本件事故の発生する直前である午前1時40分ころ、本件事故現場から約100メートル東京寄りの地点で、丁車とリヤカーをひいた自転車との衝突事故があり、乙、丙車は、その実況見分を担当する警察官が乗車して現場に来ていたものであるが、本件事故の発生した時には、すでに、その実況見分を終了し、セイフテイコンを片づけ、帰署しようと、関係者一同が乙、丙、丁車に分乗し終った時であって、交通規制も解除され、交通状況は正常に復していた。

 実況見分終了後、丁車は、下り線の第一通行帯の道路線から車体の左外側まで0.8メートルの位置に、千葉方面を向いて駐車していた。丁車の巾は、1.695メートルで、右外側は道路線から2.495メートル(通行帯の境界線まで1.245メール)離れていた。丁車が警察署へ赴くため発進準備中、甲車がその後部に衝突して本件事故となり、その結果、丁車は約121メートル下り線を走り、道路線のガードレールに衝突して停車した。乙車は、実況見分終了後、前照灯を点灯し、上り線左側道路縁一杯に寄ったのち、ハンドルの切り替えを行なつて右折し、第二通行帯(上り線)に入り、センターライン近くまで進み、前照灯で丁車付近を照射する位置に方向を転換しつつあった際、本件事故が発生した。

 被害者は、甲車を運転して東京方面から千葉方面に向けて下り線を時速約100キロメートルで進行してきたが、本件事故現場付近に至ってはじめて乙車が前照灯で弧を描きながら上り線内を照射し、ハンドルの切り替えを行ないつつセンターラインに近づいてきたのに気づき、乙車がセンターラインを越えて下り線内に進入するものと即断し、これとの接触を避けようとして、漫然甲車を道路の左側に寄せて進行したため、道路縁近くに駐車していた丁車の後部真後ろに衝突し、火を吹きながら右手に鋭く斜行し、約72メートル走ったのち、上り線の中央辺に停車した。

最高裁の判断

 最高裁は、乙車に自動車専用道路において転回行為をするについて過失があるとして、自賠法3条但書の免責を認めませんでした。

 本件道路は、自動車専用道路であるから、自動車は、一般に、横断し、転回し、または後退することを禁じられている。緊急自動車については若干の除外規定が設けられてはいるが、転回行為を許す明文の規定は、法令上存しない。緊急自動車については、その目的の緊急性に応じて、除外規定を弾力的に解釈する余地もないではないが、自動車専用道路における車両の転回行為を禁止する前記法条の趣旨に照らせば、たとえ緊急自動車であつても、かかる例外的行為に出るときは、特段の注意を払い、通常の事態を予想して通行している一般車両の走行に危険を与え、事故を誘発することを末然に防止すべき注意義務があるものといわなければならない。

 緊急自動車とは、法令の定める自動車で、当該緊急用務のため、政令で定めるところにより運転中のものを指し、警察用自動車については、犯罪の捜査、交通の取締りその他の警察の責務の遂行のため使用するものであって、緊急用務のため運転するときは、特段の必要がある場合を除き、法令の定めに従って設けられたサイレンを鳴らし、かつ、赤色の警光灯を点灯することを要するものとされている。法令が、このような規定をおいているのは、緊急自動車がその特別の用務のために他の車両に優先して道路を進行することを保障する一方、その進行を一般の車両等に警告することによって、それから生ずることのあるべき危険を未然に防止しようとするにあるものと解される。本件において、事故現場での実況見分を終了して帰署しようとしていた乙車にいかなる緊急の用務があったかは、原審の確定しないところであるが、かりに乙車にそのような緊急の目的があつたとしても、いやしくも、一般車両の転回行為が禁止されている自動車専用道路において、かかる転回行為をしようとする場合には、反対車線を走行してくる車両に対して、これを予知させ、もって、右車両が突嗟の措置に窮し思わぬ事故を招来せしめないよう少なくとも、法令に定められたサイレンを鳴らし、かつ、対向車両の進行を急激に妨げないような時機と方法を選んで転回行為に及ぶべきであり、また、本件のように、事故現場の実況見分を終了して帰署する場合においては、交通量に応じ、車両の転回行為の終了するまで交通規制をし、あるいは居合わせた警察官をして乙車を誘導させる等、乙車の異例な行動から生じうべき事故を未然に防止すべき何らかの措置を講ずるのが当然である。

 本件事故の発生したのは夜間であって、乙車の前照灯の動きは反対車線を走行してくる車両の視界を妨げるおそれがあり、加うるに、反対車線の前方側縁には丁車を停車させていたのであるから、乙車の運行には、さらに一そうの慎重さが要求されて然るべきである。しかるに、原審の確定するところによれば、当時、乙車あるいは丙車がサイレンを鳴らしていた様子はなく、すでに、現場は交通規制も解除されており、居合わせた警察官らは、すべて車両に分乗し終っていたのであり、乙車は、反対車線を甲車が高速で進行して来たにもかかわらず、その直前で転回行為に及んだというのであるから、たとえ被害者の運転に重大な過失があったとしても、乙車の右運行は、なおかつ危険な行為というほかはなく、その運行には、前記説示の趣旨において過失あるを免れないものというべきである。


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