子が自分の所有している車両で交通事故を起こした場合に、親が運行者責任を負うか?を判断した最高裁判決を紹介します(運行供用者責任については、運行供用者責任を参照)。
最高裁昭和50年11月28日判決
父親と同居し家業に従事している子が所有し、父親の居宅の庭に保管されていた自動車の所有者登録名義人が父親になっていたという事案です。
事案の概要
Xは、本件自動車の所有者であるAから、その所有者登録名義人となつていることを知らされ、これを了承するに至つたのであるが、Aは、Xの子であり、当時満20才で、X方に同居し農業に従事しており、その自動車はX居宅の庭に保管されていた。
最高裁の判断
最高裁は、運行供用者責任について、一般論として次のように述べています。
自動車の所有者から依頼されて自動車の所有者登録名義人となつた者が、登録名義人となった経緯、所有者との身分関係、自動車の保管場所その他諸般の事情に照らし、自動車の運行を事実上支配、管理することができ、社会通念上自動車の運行が社会に害悪をもたらさないよう監視、監督すべき立場にある場合には、登録名義人は、自動車損害賠償保障法3条所定の自己のために自動車を運行の用に供する者にあたると解すべきである。
そして、本件において、次のように述べ、父親が運行供用者に当たると判断しています。
上記の事実関係のもとにおいては、Xは本件自動車の運行を事実上支配、管理することができ、社会通念上のその運行が社会に害悪をもたらさないよう監視、監督すべき立場にあったというべきであって、自動車の運行供用者にあたると解するのを相当とする。