保険事由である「急激かつ偶然の外来の事故で身体に傷害を受けたこと」に関する主張・立証責任を判断した最高裁判決を紹介します。
最高裁平成19年7月6日判決
交通事故の事案ではありませんが、人身傷害保険に関連する事案として紹介します。この判決では、保険事由が「急激かつ偶然の外来の事故で身体に傷害を受けたこと」である場合の保険金請求者の主張・立証責任が問題になりました。
事案の概要
上告人は、中小企業を対象とした災害補償共済事業等を行う財団法人である。
被上告人は、平成10年6月2日、被共済者を被上告人代表者乙川花子の夫である乙川太郎と定めて、上告人の会員となった。
上告人の財団法人中小企業災害補償共済福祉財団規約には、災害補償について、次のような定めがあった。
①(共済金受取人)
上告人は、会員の定めた被共済者に災害が発生したときは、本件規約に基づき、会員に補償費を支払う。
②(災害の定義)
本件規約の災害とは、急激かつ偶然の外来の事故で身体に傷害を受けたものをいう。
③(補償の免責)
上告人は、被共済者の疾病、脳疾患、心神喪失、泥酔、犯罪行為、闘争行為、自殺行為又は重大な過失によって生じた傷害については、補償費を支払わない。
太郎は、平成15年8月、医師からパーキンソン病と診断された。パーキンソン病の患者にはえん下機能障害の症状が出ることがあるが、太郎については飲食に支障はなく、医師から食事に関する指導等はされていなかった。
太郎は、平成17年2月3日、昼食のもちをのどに詰まらせて窒息し、直ちに病院でそ生処置を受けたが、低酸素脳症による意識障害が残り、常に介護を要する状態になった。
原審の判断
本件規約に基づき補償費を請求する者は、被共済者が外来の事故で身体に傷害を受けたことを主張、立証すべき責任を負うが、疾病など内部的な原因がなかったことまで主張、立証しなければならないものではない。
最高裁の判断
最高裁は、原審の判断を是認しています。
本件規約は、補償費の支払事由を被共済者が急激かつ偶然の外来の事故で身体に傷害を受けたことと定めているが、ここにいう外来の事故とは、その文言上、被共済者の身体の外部からの作用による事故をいうものであると解される。そして、本件規約は、この規定とは別に、補償の免責規定として、被共済者の疾病によって生じた傷害については補償費を支払わない旨の規定を置いている。
このような本件規約の文言や構造に照らせば、請求者は、外部からの作用による事故と被共済者の傷害との間に相当因果関係があることを主張、立証すれば足り、被共済者の傷害が被共済者の疾病を原因として生じたものではないことまで主張、立証すべき責任を負うものではないというべきである。